大切なもの


□大好きな日々にさよならを
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「…ごめんね、カカシ」



昨日は堪えていた涙が最後に溢れ出した。

カカシ、なんでって顔してたなぁ。それもそうか。昨日の今日で私は抜け忍になったんだから。
イタチくんに続いて枝を蹴りながらそんなことを考える。

カカシ、大丈夫かな。また自分を追い込んだりしないかな。カカシは何も悪くないんだよ。私が無力なのがいけないんだから。自分を責めたりしないで。自暴自棄にならないで。あなたはひとりじゃない。木ノ葉には仲間がいる。
なんて、こんなときまでカカシのことしか考えられない自分が嫌になる。



「ユウナさん」



前を進むイタチくんが遠慮がちに振り返る。
彼の額当てにも私と同じ線が入っていて、私もこれでいよいよ里には帰れないんだと実感しちゃうわけで。



「…なに?」

「そんなに気に病まないでください。あなたは暁の我が儘に振り回されているだけです」

「…」

「あなたはなにも悪くないんです。里や綱手様やあなたには危害は加えさせない、俺が約束します」

「…イタチくん」

「あなたは火の意志を信じてください」

「!」



これが本当に、あの一族を皆殺しにしたっていうイタチくんなの?彼の目はたしかに私を見据えていた。信じられる目だった。

うちは一族の一件には、何か里の影があったのかもしれない。
辛そうに顔を歪めるイタチくんを見てそう思った。


私の火の意志。それは大切なものを守ること。
どんな罪を犯したとしても、それだけは曲げられない。私が犯罪者になることで里や大切な人を守れるなら安いもんだ。それを果たせるならこんな命なんて喜んでくれてやる。


オビト、リン。
私、あなたたちを裏切ってしまったのかもしれない。でも信じてほしい。2人がいた里は、私がきっと守るから。

カカシ。
ごめんね。また辛い思いをさせることになっちゃったね。カカシはカカシに出来ることをしてほしい。私にはこの手で里を守ることはできないから、だからカカシに任せたい。我が儘ばっかりでごめんね。カカシのもとに帰るっていう約束も破ってごめん。でも、カカシに幸せになってほしいっていうのは本当だから。きっと、私よりもいい人がいるはずだから。

お願い、カカシ。幸せになって。


そんなことを思いながら、私はひたすらに枝を蹴った。



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