大切なもの


□滲む希望に願いを込めて
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カカシに告白されてから数週間。
気づけば4月に入っていて、今日は小春日和とも言えるほどあったかい日だ。

この数週間の私の忙しさは尋常じゃなかった。
通常任務に加えて医療班の指導に医療忍術の研修会、この前の飲み会で声をかけてくれたサキちゃんの修行に付き合ったり、木ノ葉病院の手伝いに三代目の執務の補佐と雑用。三代目は優しい顔して容赦なくこき使ってくれるから正直もうヘトヘト。

そんなこんなで今日は久しぶりに1日待機の日。何事もなく終われば今日は本当にゆっくりできる。
朝一番の欠伸を噛み殺しながら待機所のドアを開けると、そこには紅がいた。



「おはよう、ユウナ」

「おはよ〜」

「あら、ずいぶん疲れてるわね」

「まぁね。三代目ったら私が孫弟子だからってほんっと容赦ないんだもん」

「ふふ。それだけユウナが期待されてるってことでしょ」



そう言いながらソファに座って紅が持ってきてくれたコーヒーを口に運ぶ。
私の好みを知ってる紅はカフェオレにしてくれてて、口の中に広がる優しい甘さに頬が綻んだ。



「そういえば、カカシとはどうなの?」

「…どうって、別に何も変わらないよ。最近あっちも忙しかったみたいだし」

「答えは出たの?」



紅にはカカシとのことをすべて話した。
後から聞けばカカシが私のことを好きでいてくれたことを知ってたみたいで、「あのヘタレ銀髪、やっと言ったのね」って嬉しそうな顔してたっけ。



「…まだ。やっぱりわかんないんだよね。今までずっと仲間だったから」

「まぁ、たしかにそうよね。特にあんたたちは仲良かったもの」

「難しいね、恋愛って」

「えぇ、そうね」



それからすぐ紅は任務に就いた。私はというと、三代目の懺悔という名の計らいか任務も入らず夕方には解放された。
そんな帰り道、商店街で夕飯の買い物をしてると、「ユウナの姉ちゃん!」と久しぶりに聞く元気な声に振り返った。任務の帰りらしく、忍服にはところどころ泥が付いていた。



「久しぶりだね、ナルト」

「おう!あのさ、あのさ!俺ってば下忍になったんだってばよ!」



そういうナルトの額には真新しい額当てがきらきらと光っていた。
そしてそんなナルトの隣には、桃色の髪の可愛らしい女の子とクールな感じの男の子がいて。



「おめでとう。よかったね」

「ありがとだってばよ!」

「で、この子たちがあんたのチームメイト?」

「おう!こっちがサスケ、んでこっちがサクラちゃんだってばよ!」

「こんにちわ、ユウナって言います。よろしくね」

「…うちはサスケだ」

「初めまして!春野サクラです。ユウナさんは、ナルトのお姉さんですか?」



サクラちゃんの言葉に驚いた後、ナルトと顔を見合わせて笑った。



「ははは、ちがうよ。ナルトと私は友達なの」

「そうだってばよ!」



得意げに胸を張るナルトが可愛くてくすくす笑った。



「そういえば、担当上忍ってだれなの?」

「カカシ先生だってばよ!いーっつも何時間も遅刻してくるし、任務の時も本読んで寝っ転がってなんもしねぇの!」



そう言ってぶうたれるナルトに目を見開いた。

カカシがナルトの担当上忍。師の忘れ形見を受け持つ弟子、か。
ほらねカカシ。やっぱり今年は出来る子たちだったじゃん、なんて思いながら笑った。



「ユウナの姉ちゃんってば、カカシ先生知ってんの?」

「んー知ってるっていうか同期だし」

「そうなのか!?」



「カカシ先生のこと聞きたいってばよ!いろいろ!」と迫り来るナルトをかわしながら、これからの木ノ葉を担っていく希望あふれるこの子たちに、頑張れと心の中でエールを送った。







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