大切なもの


□成果と手合わせ
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ナルトと会ってから早くも1週間が経って、いよいよ上忍試験の日。
昨日は柄にもなく緊張して一睡もできなかった。でもその分この1週間の修行を思い出せたから良かったとプラス思考に持っていく。上忍試験とはいえ会場になった演習場には三代目と試験官、そしてこれから来る試験相手と唯一の受験者の私だけ。



「それではこれより、上忍選抜試験を開始します。ではユウナさん。そろそろ試験相手を紹介しますね」

「…はい」



ああ。やっぱり柄じゃない。ばくばくと心臓がうるさい。落ち着けようと目を閉じて深呼吸する。
落ち着け、落ち着け。この1週間を、この10年間を思い出せ。大丈夫、私ならやれる。

少し落ち着いて三代目に目をやるとなぜかにたりと笑っている。その顔に綱手様のめんどくさいことになるときの面影を感じて嫌な予感がするわけで。



「ユウナさんの相手は…」



そんな試験官の声とともに目の前に上がった煙。それが晴れたとき、やっぱりと予想してた顔がいたわけで。



「よ!」

「上忍、はたけカカシさんです」



案の定、としか言いようがない相手にまた三代目を見るとしてやったりって顔をしている。
わかってたけどね、あんたの顔見たら。つーかあんたいくつだよ。子供かよちくしょう。
頭の中で思いつく限りの悪態をついているとカカシの指にぐいっとおでこを押された。



「った!」

「なーに三代目にメンチ切ってんのよ。ずいぶん余裕あるじゃないの」

「…してやったり顔に腹たった」

「はぁ?」



カカシがわけわからんといった表情を浮かべるのと同時に聞こえた咳払い。試験官が早く始めたいんですけどって顔してる。すいませんね、モウシワケナイ。
カカシと正面に向か合い気合いを入れ直すために額当てをきつく結び直しグローブをはめる。そして大きく息を吐きじっと真っ直ぐにカカシを見据える。



「お二方とも、いいですか?」

「いいよ」

「はい」

「…それでは、上忍選抜試験……はじめ!」



そんな試験官の声が聞こえたと同時に手と足にチャクラを溜めてカカシに飛びかかって拳を突き出せばすんでのところで避けられた。いつの間にか上げられた額当ての下の真っ赤な瞳がなんだか懐かしい。つーか避けられたよクソ。
カカシに届くはずだった拳は行き場がなくなって、勢いそのまま後ろにあった木に突っ込んだ。吹き飛ぶ木に溢れる舌打ち。



「おー怖い怖い。あぶなかったぁ」

「…喧嘩売ってんの?」

「そんな命知らずな真似するわけないでしょ」

「…まぁいいや。伊達に10年里を離れて修行してたんじゃないってとこ見せてあげる」

「さすが綱手様の愛弟子ってところかな。…でも、ま!俺もあの頃よりは強くなってると思うよ」



相変わらず腹立つ言い方するやつだちくしょう。まぁ、わざと私を煽ってるって感じだけど。
そんなことを考えながら印を結ぶ。



「火遁・灰積焼!」

「水遁・水陣壁!」



…やっぱ読んでくるよね、こいつ。絶対的に回したくないタイプだわ。しかも印結ぶスピード上がってるし。
はあ、と心の中でため息をついて体術戦に持ち込む。私が拳を突き出せば止める、足を蹴り上げれば避ける。さすがエリート上忍。ぬかりないなぁなんて早くも諦めモード。

けどここで中途半端な結果もムカつくし。カカシに参ったって言わせてやる!
そう思ってさっきよりもスピードを上げて殴りかかればすっ、と消えたカカシ。冷静に辺りを見回す。上を見てもいない、右を見てもいない、左もダメなら…、と地面に拳を叩きつければ案の定で。抉れた地面の中でバレたかって顔を浮かべるカカシになお腹が立つわけで。

そのあとも全く変わらない攻防。試験だからかなかなか向こうから仕掛けてこない。私は攻め、カカシは守りに徹してる。ちくしょう、やるなら来いよ。カカシが仕掛けてくるまで待ってられなくて結局攻め倒す。そしてギリギリで避けられてまた腹が立つ。
「そこまで!」と響いた試験官の声に動きを止め乱れた忍服を正すとカカシは額当てを下げた。



「結果は3日以内に火影様より直々に申し渡されます。試験はこれにて終了です。お疲れ様でした」



敬意を払って向かい合って一礼。頭を上げてカカシを見るとなぜか満面の笑み。
なんでそんな嬉しそうなのかわかんないけど私もその笑顔につられてにっ、と笑った。





成果と手合わせ
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