大切なもの


□ともだち
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「…ともだち、かぁ」



やっぱいい響きだってばよ。

俺ってば小せぇときからずっとひとりだった。父ちゃんと母ちゃんがいないのが当たり前だった。でも、本当はすっげー寂しかった。つらかった。三代目のじいちゃんは優しくしてくれたけど、それじゃ足りなかった。

なんでか知んねぇけど、大人はみんな俺を避ける。「化け物」って突き飛ばす。アカデミーでも友達なんて全然できなくて、誰かに俺のことを見てほしくていたずらばっかした。

そんな俺にもやっと今日、“友達”が出来た。ユウナの姉ちゃんはあったかかった。こんな嫌われ者の俺をぎゅっと抱きしめてくれた。独りじゃないって言ってくれた。初めて会ったのに不思議な感じだったってばよ。


俺ってば頭悪ィから難しいことはよくわかんねぇけど、でも、ユウナの姉ちゃんは信じられる。そう思うんだ。ずっとひとりだった俺に初めて出来た友達。初めて俺のことを認めてくれた人。まだ一回しか会ってねぇけど、そんでもユウナの姉ちゃんは俺の大切な人だ。

俺を認めてくれたユウナの姉ちゃんは俺が絶対ェ守る。まだまだ俺は弱ェから守られる側かもしんねぇけど、でも絶対ェ守る。そう決めた。

「約束ね」とそう言って結んだ小指もあったかかったから。
俺もユウナの姉ちゃんみたいに、勇気や希望を与えられる人になりてぇ。ユウナの姉ちゃんのみたいに、おっきくてあったかい人になりてぇ。そう思った。



「…明日、みんなに声かけてみよう」



ユウナの姉ちゃんに勇気をもらったから。俺はもう、ひとりじゃねぇから。友達出来たらユウナの姉ちゃんに紹介すんだ。俺ってば友達出来たんだぞ!つってな。

ベッドに入ってガバッと布団をかぶる。
目を閉じてユウナの姉ちゃんの笑顔を思い浮かべながら眠った。






ともだち
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