大切なもの


□思いやり溢れる選択
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翌日
早朝から三代目の呼び出しがかかり向かった執務室。
ノックして扉を開けると昨日同様煙管を燻らせてこちらに背を向けて座る三代目の姿があった。



「お呼びでしょうか」

「うむ。朝早くからすまんのォ」

「いえ。それで、どういったご用件で」



あー眠たい。眠すぎる。口の中であくびが止まらない。
三代目が用意してくださった新居は2LDKのアパートだった。たぶん綱手様やシズネが帰ってきたときに泊まれるようにと広い部屋を探してくださったんだろう。ありがたい。しかし昨晩は入居初日ということもあって頭が冴えて緊張して全然眠れなかった。おかげでほぼ完徹。まぁ1日ぐらい寝なかったところでどうってことないんだけど。綱手様の賭け事や酒に付き合って丸2日寝ないことなんてザラにあったし。ぼんやりとそんなことを考えていると、高そうな椅子をくるりと返し振り返った三代目。



「ユウナよ。お主、階級は?」

「中忍です」

「…やはりな。綱手の愛弟子であるお主が中忍とはもったいない。そこでお主には任務より先に上忍試験を受けてもらおうと思うておる」

「上忍、試験…」



私が上忍か。
上忍試験って言えば、2名以上の上忍からの推薦で受けられたはず。現役の上忍か特別上忍を相手に実戦形式で受験者の実力を見る試験。

実戦かぁ。しばらくやってないから勘鈍ってないかなぁと柄にもなく不安になる。それに長年里を離れていた私に現役の上忍たちの推薦があるとは思えない。そんな私の考えなど読めていたのか三代目はほくそ笑んでこう言う。



「推薦に関しては綱手も一応階級は上忍じゃ。それにお主、カカシとも親しいじゃろう。彼奴からの推薦も加われば木ノ葉でも屈指の実力を持つ2人からじゃ。何の問題もない」

「…はぁ」

「次に試験に関してじゃが、お主も知っておる通り実戦形式で行われる。じゃがそこまで案じずとも良い。お主の実力を見させてもらいたいだけじゃからの」

「…はい」

「とはいえお主にその気がないなら無理に話は進めん。急ぐ話でもないからのォ。自分の今後をよく考えて返事をくれれば良い」

「はい」



何と慈悲深いお方だろうか。
突然何の連絡もなくふらりと帰ってきた私に家を用意してくれてその上こんなチャンスまで。正直に言えば階級はどうでもいい。中忍でも火影様の指示があれば上忍クラスの任務に出ることも出来なくはないし、それに私に上忍なんて柄じゃない。だけど、三代目がくれたこのチャンスを生かしたい。こんな私でも師のために、里のために少しでも役に立てるのなら。

気づけば私は三代目に「受けます」と言っていた。
私のその答えを聞いて孫を見るような顔をする三代目。そりゃそうか。孫弟子だもんな、何て考えていると、三代目は私に歩み寄ってポン、と肩に手を置いた。



「期待しておるぞ、ユウナ。わしと共に木ノ葉を守ってくれ」

「…はい!」



ありがとう、三代目。
あなたの期待に応えられるよう精一杯励みます。

そして綱手様。
あなたのような豪快で素敵で立派なくノ一になれるよう精一杯頑張ってきます。どうか、どうか見守っていてください。あなたを守れるだけ強くなります。必ず。




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