大切なもの


□懐かしい顔
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「…久しぶり、みんな」



そう声をかけて道中に買った花を供えるのは、木ノ葉のために散っていった英雄の慰霊碑。
ここには私の大切な人たちの名が刻まれている。父さん、母さん、兄ちゃんに、それから、



「元気だった?オビト、リン」



…大切な、“友達”の名が。

うちはオビトとのはらリン。2人は第三次忍界大戦のときに殉職した。
アカデミーに入る直前に家族を一気に失った私は塞ぎ込んでいて、ひとりでいたいとそう思ってた。友達や仲間なんて自分には必要ないって勝手に決めつけて壁を作ってた。
だけど、それは違うとその壁を壊してくれたのがミナト班の3人だった。私なんてただの同期ってだけなのに、3人はいつも私を気にかけてくれた。
お前は1人じゃねぇって肩を叩いて励ましてくれたオビト、わたしはユウナの友達だよって微笑みかけたくれたリンにそれから、同じような境遇だからわかると心を支えてくれたカカシ。

この3人がいたから今の私がいる。
でも私はオビトとリンを救えなくて、カカシにまた辛い思いをさせてしまったから。もう誰も失いたくなくて、誰にも失わせたくなくて、たとえ少しでも人を生かせるようにと綱手様に弟子入りした。
そしてこの10年間、綱手様の元で死に物狂いで修行した。“大切な人を守りたい”。その一心で。



「…ねぇオビト、リン。私、強くなれたかな」



大切な里を、大切な人を守れるように。もう誰も何も失わないように。未来を生きていく子供たちに私のような思いをさせないように。その願いが叶えられるほど、私は強くなれたのかな。

決して返ってくることのない答えを求めて問いかける。
ふわりと舞う木の葉に、みんなが大丈夫だと微笑みかけてくれた気がして思わず口元が緩んだ。



「おかえり、ユウナ」



里を出る前に聞いた声よりもずいぶんと低くなって、だけどやる気のない感じはそのまま。少しばかり会わなかっただけのように話しかけてくれるのは、数少ない今を生きる私の友達。



「ただいま、カカシ」



いつの間にか隣にいたカカシにそう声をかけた。
顔のほとんどを隠してるから相変わらず表情が読みにくいけど、それでも私の帰還を喜んでくれているように感じるのは思い上がりかな。



「元気だった?」

「ま、そこそこね。相変わらず休みなく働かされてますよ」

「はは。優秀だからね、カカシは」

「たまには労ってほしいもんだよホント」

「…あれ、なんか雰囲気丸くなった?」

「ま、あれからずいぶん経ったからね」

「…それもそうだね」



10年という月日は人の醸し出す雰囲気をも変えてしまうらしい。それもそうか。私だって里を出たあの頃の私じゃないはずだし。良い意味でも悪い意味でも、人は変わっていくそういう生き物だから。



「ユウナはあれだね、女になった」

「…はぁ?私はもとから女ですけど」

「や、そういう意味じゃなくて…」

「じゃあどういう意味よ!」



ちょっぴりムカついてカカシのこめかみを拳でぐりぐりすれば「痛いから!」なんて腕をぺしぺし叩かれた。
何年経っても中身はかわってないわこいつ。でも、こうやって何年経っても気を使わず素の自分でいられる存在って本当に大きいもので。昔から何ひとつ変わらないこういう関係もなんだかくすぐったくて、でも嬉しい。



「…ま、力はバカに強くなってるけど変わってなくて安心したよ」

「そりゃ綱手様直々だからねぇ。あの人の怪力ほど恐ろしいもんないから」

「そりゃそうだ」



私の方を向いてニコッと微笑むカカシに変わらないななんて思ってつられて笑った。






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