大切なもの


□それは突然でした
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「ユウナ。お前は木ノ葉に戻れ」


唐突に聞こえた師の言葉にこっちは言葉を失った。
突然何を言い出すんだこの人は。だいたい私がいなくなったら誰があなたのそのだらしない金銭管理をするんですか。あればあるだけ、たとえなくても絞り出して使うあなたを今まで止めてたのはだれですか。
今思ったことがすべて顔に出ていたのか、綱手様はバツが悪そうに頬をかいてそっぽを向いた。



「金のことはシズネにやらせる!今までお前がやってたことを近くで見てたんだ。出来るな、シズネ!!」

「アヒィっ!!はっ、はい!」

「…どんまい、シズネ」



あーぁ、シズネに当たっちゃったよ綱手様。ごめんね、可愛い妹弟子。この人の金銭管理は思ってる以上に骨が折れるけど、まぁ頑張って。
半泣きになってるシズネに哀れみの視線を送っていると綱手様のきりりとした視線を感じて私も顔を引き締めた。



「ユウナ。お前はあたしの優秀な弟子だ。この10年間であたしの持てる力のすべてを注いだ。…そこでだ。お前は木ノ葉に戻って猿飛先生や里のみんなを助けてやってほしい。今木ノ葉は深刻な忍不足だと聞く、もともと少ない医療忍者だと尚更な。頼んだぞ、ユウナ」

「…綱手様。そうしたいのはやまやまですが、私はまだまだ未熟です。それにまだ教わりたいことがたくさんあります」

「…ユウナ、お前は自分に対して厳しすぎるぞ。たしかに忍をやる上で貪欲に成長したいという気持ちは大切だ。だがお前には自信がなさすぎる。もうすこし胸を張れ。大丈夫、お前はあたしの自慢の弟子だ」



そういって私をなだめるように眉間に皺を寄せてにっ、と笑う綱手様。こんな笑顔向けられたらこれ以上ごねられないじゃんまったく。

あぁもう本当にこの人は。いつまで経っても子供みたい。でも、芯が強くてやっぱり格好良い。素敵な女性。くノ一としてはもちろん人としても尊敬してやまない。これじゃあいつまで経ってもかないっこないよまったく。



「…わかりました。でも、いつかは帰ってきてくださいよ?」

「…あぁ、いつか、な」

「じゃ、じゃあユウナさん!お元気で!」

「シズネ、綱手様のお守りは大変だけどしっかりね!」

「誰のお守りだって!?調子にのるなバカ!」

「いでっ!!」



今手加減しなかったでしょあんた。バカ力なんだからちょっとぐらい加減してくださいよ。
拳骨が落ちてジンジン痛む頭を抱えながらも、やっぱりこの人はあったかいなぁなんて思うわけで。

私に背を向け歩き出した綱手様に、深く深く頭を下げた。



「10年間お世話になりました!一旦、さようなら!!」



遠くなった師の背中にそう叫んで頭を上げると、返事の代わりに上がった右手。

喧嘩っ早いし賭け事命だししっかりしてるようで抜けてるとこも多いけど、誰よりもおっきくてあったかくて優しい大好きな私の師。
この人の弟子になれて幸せだなぁなんて思いながら晴れ渡った青い空を見上げた。





それは突然でした
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