大切なもの2

□真相に触れる鍵
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「――これが、うちは残滅の真相だ」

「…」



あの雷影がサスケを追っていると知って説得のために向かった鉄の国で、突然時空の歪みと共に現れた暁の面の男…もとい、うちはマダラ。
さっき自分でそう名乗ってたけど本当のところはわからない。なんてったって、うちはマダラは木ノ葉創設期の人物。初代様との数々の逸話の持ち主でいわば伝説だ。いや、だからこそ信ぴょう性があるのかもしれないが、今の俺やナルト、奴を木遁で拘束してるヤマトには、そんなことよりも目の前の男から聞いた話のほうが信じがたい。

イタチが、一族殺しの凶悪犯ではなかった、ということ。
里とうちはの二重スパイだったことや、あの事件を起こしたのはうちはのクーデターを未然に防ぐための里からの任務だったこと。そして里を抜けた理由は、汚名を着せられてもなお暁の内部から木ノ葉を守るためだったこと。

あいつほどの実力の持ち主だ、なにか裏があるとは思っていたものの…まさかここまでのことだったとは。



「この話は、ユウナも知っている」

「!」

「ユウナの姉ちゃんも…?」

「イタチが自分で話したんだろう。あいつはユウナには懐いていたからな」

「…ではなぜ、あの日ユウナは話さなかったんだ」

「言えばカカシ、お前は信じたか?」

「…っ」



言葉に詰まった俺を見て、マダラはひとつ深い息を吐いた。



「本来イタチは、この事実が明るみになることを望んではいない。あいつは優しすぎた。自分が汚名を背負うことでサスケも里も全てを守ろうとした。愚かな男だ」

「…」

「だが、やはりあいつも人間。ユウナにだけは自分の気持ちを素直に話したかったんだろう。ユウナはサスケのことも気にかけていたからな」

「…」

「あの日、イタチが死んだときにユウナがお前たちに話せなかったのは、イタチの気持ちを尊重したからだ。事を公にすることだけが善とは限らん」

「…ではなぜ、お前は俺たちに話す」

「お前たちは知っておいた方がいいだろう。執拗にサスケやユウナのことを連れ戻そうとしているんだからな」

「…」

「このことも知らずに仲間だ大切だと生温い常套句を並べ立てたところで、所詮戯言だ。サスケもユウナも抜け忍。それは揺るがん」

「お前は何がしたい」



言葉に詰まった俺やナルトに変わり、まだ冷静なヤマトがマダラを見据える。



「…何がしたいんだろうな、俺は。ただ…」

「…」

「ユウナやイタチのように苦しむ者のない世界を作りたい」

「!」

「…と、世迷言でも言っておこう」

「…っ」



そのとき、ちらりと俺を見たマダラと目が合った。
面の穴から除くその瞳は写輪眼。奴がうちは一族であるという証拠だった。



「…お前は一体何者だ」

「名乗らなかったか?俺はうちはマダラだ、と」

「それは聞いたさ。だがうちはマダラは木ノ葉創設期の人物。…もう生きてるはずはない」

「この世に絶対は存在しない。それは誰にも証明できんさ」

「…」

「ユウナもお前と同じような反応をしていたな。信じられない、まさかといったような風だったか。だが結局すぐに理解した…いや、考えることを放棄したのかもしれんな。そのころ他にサスケやイタチのこともあった」

「…」

「自分のことより他人のことを優先し、他人の痛みを背負いともに悲しむ。他人が苦しんでいれば手を差し伸べ、弱っていればまた、手を差し伸べる」

「…」

「…あいつは昔からそうだ」

「!!」



俺から目を逸らしそうぼそりと呟いたマダラに目を見開いた。
なんだ、あの口ぶりは。まるで昔からユウナのことを知っているような。それに、言葉で表すのは難しいけど、最後の言葉だけマダラがマダラじゃないようなそんな気がした。声と見た目は同じで、心が違うようなそんな不思議な感覚がして疑問が残る。



「ああ、ついベラベラと無駄話が過ぎたな。今日のところはこれで退散するとしよう。…九尾、お前とはまた近いうちに顔を合わせることになるだろう」

「…おい、グルグル」



ずっと黙っていたナルトが、ヤマトの作った木格子を握りしめながらマダラを睨みつける。



「なんだ」

「お前なんかにサスケもユウナの姉ちゃんも渡さねェし、俺も捕まる気はねェ。このまま黙ってるだけと思うな」

「驕るな。お前ごときがこの俺に刃向かって勝てると思う…」

「あぁ、思ってる」

「!」



いつになく真剣な眼差しを向けるナルトに息をのんだ。
ったく、俺の知らないところでお前はやっぱり成長してるんだな。師として鼻が高いよ。



「俺はお前ェらなんかにゃ絶対ぇ負けねェ。絶対ェぶっ飛ばしてやっから!覚えとけクソ野郎!」

「…さらばだ」



忌々しげな視線をナルトに向けたマダラは、現れたときと同じように時空を歪ませ消えた。
ナルトを囲っていたヤマトの木遁を解くと、とっさに俺に駆け寄って来たナルトは「すぐに雷影んとこ行って、早くサスケのことを許してもらうってばよ!」と懇願してくる。それをなんとかたしなめながら、さっきマダラと名乗った男が口にした言葉の意味を考えた。

…だけど、いくら考えても明確な答えにはたどり着かなかった。




真相に触れる鍵
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