大切なもの2

□肩にかかる息が震えている気がする
1ページ/1ページ






「…ごめん、それは約束できないや」

「!」



カカシは私に、どこにも行かないでと言ってくれた。
純粋に嬉しかった。私もカカシのそばにいたい。3年前に里を抜けてやっと帰ってきて、真正面からカカシと話せるこの光景をずっと夢見てた。

ダンゾウの親父には本当に腹がたつ。私のことをカカシに言うなんてデリカシーがなさすぎる。まぁ、あんなクソ親父にそんなもんを求めることが間違ってるんだけど。おそらく、私のことを持ち出せばカカシが怒るのをわかってて言ったんだろう。相変わらず姑息なやり方だ。

だけど、私がカカシのそばにいられないのはダンゾウの言葉があったからじゃない。



「私ね、気になることがふたつあるの。それを自分で調べたいんだ」

「…ちょっとまって、」

「たぶんそれは私にしかできないことだと思う。だから、またカカシと離れることになっちゃう」

「…っ」



まずひとつはサスケのこと。
イタチくんを殺したのが木ノ葉だって知って、たぶん今あの子は木ノ葉への復讐に染まってると思う。私が言ったことも意味はなかっただろう。イタチくんという復讐の標的がいなくなって進む道が真っ暗になったはず。ずっとずっと幼い頃からイタチくんを殺すことだけ考えて生きてきて、その目的が最悪な形で達成された今きっとあの子の心の中には木ノ葉への復讐心しかないはずだ。

兄の敵討ち。
そういえば聞こえはいいけどそんな生易しいもんじゃない、そしてそこに付け込まないマダラじゃない。でもきっと今もあの子の心の中には木ノ葉で過ごしたあったかい思い出も残ってるはずだから。私があの子を木ノ葉に帰す。


ふたつめは…そのマダラのこと。
まだ確証はないけど、でもきっとあのマダラはマダラじゃない。いくら伝説の忍と言われたマダラでもこんなに長く生きていられるはずはない。仮に生きていたとしてもよれよれのおじいさんになっているはず。そう思ったらふと湧いた疑念。

じゃあ、あのマダラは誰?
それを考えたところで思い当たることは悔しいけど、ない。だけどもしあのマダラがマダラじゃないとしたら誰なんだって話で。それを調べられるのはきっと私しかいない。


そのために私は、暁に戻る。



「…ダメだ」

「…」

「そんなこと許さない」

「…カカシ」

「やっと、やっと帰ってきたのに…」



私にしがみついて声を抑えながらそういうカカシ。
ありがとう、カカシ。やっぱり帰ってこられてよかったよ。もう一度カカシとこうして面と向かって話せてよかった。でも、私にしかできないならやらないってわけにはいかないんだよ。それに私がここにいることでダンゾウのことみたいにまたカカシを苦しめることになるならそれも嫌だ。



「カカシ」

「…やだ」

「お願いカカシ、話を聞いて」

「…聞かない」



駄々っ子のように嫌々を繰り返すカカシにぽろっと本音が溢れて。



「…私だって、ずっとここにいたいよ。カカシと離れたくない」

「!」

「だけど私じゃなきゃダメなんだよ。私以外にはできないことなの」

「…」

「お願い、わかって」



そういって頭を撫でるとしばらくしてゆっくりと体を離して私と向かい合うカカシ。
その顔には諦めにも似た表情が混ざってて。



「…どれだけ止めても無駄みたいだね」

「…ごめん」

「謝らないでよ。ユウナのやりたいようにすればいい。それは誰にも止められないよ」

「…」

「だけどユウナ、もう一度言うね」



ふーっ、と息を吐いて真っ直ぐに私を見つめるカカシから目が離せなかった。



「お前は独りじゃない」

「!…うん、」

「お前がどんなに悪人と言われようと大罪人と言われようと、お前の帰ってくる場所は木ノ葉だ、俺のところだ。いつかまたここでお前と過ごせるって俺は信じてるから、だから、」



「どうか生きていてくれ」
また抱きしめて私の肩に顔を埋めて感情を押し殺すように紡がれた言葉にこくん、と頷いた。


何度も何度も我が儘言ってごめんね。
そして、ありがとう。



肩にかかる息が震えている気がする
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ