大切なもの2

□浮足立った仮説
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「ナルト!!」



そんなサクラちゃんの叫び声に視線を辿ると、そこにはがらりと姿を変えたナルトがいて。



「カツユ様、一体これは…」

「…ヒナタさんがナルトくんを守ろうとしてペインに倒されました。それでナルトくんは怒りのあまり尾獣化してしまったようです」

「そんな、ヒナタが…」

「…サクラちゃん、そのヒナタって?」

「…私やナルトの同期で、ずっとナルトのことを想ってる子です」



悔しそうに唇を噛むサクラちゃん。そんな妹弟子の姿に、ヒナタちゃんがいかにナルトのことを想ってくれてるかが伝わってくる。

そっか。ちゃんとナルトのことを見てくれてる子がいたんだ。女の子はいつだって好きな人がピンチなら助けたくなるものだもんね。ヒナタちゃん、私もわかるよ。あなたが命をかけてでもナルトを守ろうとしたその気持ちが。



「サクラちゃん」

「…はい」

「隙を見てヒナタちゃんをここに連れてきて。私が治療する、今ならまだ間に合う」

「!そんなことしたらユウナさんが…」

「…女の子はいつだって、大好きな人のためには命も懸けたくなるもんでしょ?」

「!」

「頼んだよ」



サクラちゃんに向かって微笑んで再び胡座をかき直して遠隔治療に集中する。
ナルト、つらいだろうけど少し辛抱してて。あんたがどんな大怪我して戻ってきても私が必ず治すから。無茶してきてもいいよ、何も気にせず突っ走っておいで。

きっと、私がみんなを助けるから。



「ヒナタ!!」



尾獣化したナルトがペインを追って行った直後、サクラちゃんがヒナタちゃんを連れてきて、それと一緒にアスマに支えられながらシカマルもやってきた。



「!ユウナさん、なんであんたがここに…」

「細かい話は後でねシカマル。すぐ治療を始めるよ。そこに寝かせて」



ぐたりと横たわるヒナタちゃんの手を、目に涙を浮かべながら握るサクラちゃん。大丈夫だよサクラちゃん。この子は私が死なせない。きっと助けてみせるから。

診察を進めていくと、想像よりも出血量が多かった。だけど、今ならまだ助けられる。安心してと伝わるようにサクラちゃんに微笑みかけて頷く。するとサクラちゃんもアスマもシカマルもほっと肩を撫で下ろしたのがわかった。

お腹に空いた穴を覆うように手をかざしてチャクラを流す。
同時進行で遠隔治療もしてるから、本音を言えばもうチャクラは尽きかけてて意識は飛んじゃいそう。でも、まだまだ救える人たちはいるから。それにナルトが帰ってくるまで私は倒れられない。無茶してんじゃないよバカ、って叱ってやらなきゃなんないもんね。



「!アスマ…」

「ヒナタは紅の教え子なんだ。絶対ぇ死なせらんねぇからよ、俺のチャクラも使ってくれ。それって出来るか?」

「…もちろん、ありがとアスマ」



私に肩にぽん、と手を添えてそういうアスマ。
紅の教え子か。なら尚更早く起こしてあげなきゃね。
そんなことを思いながらもらったアスマのチャクラも一緒に流していると、唸り声とともに目を覚ましたヒナタちゃん。



「…サクラ、さん?」

「ヒナタ!よかった!」

「…わたし、」

「もう大丈夫だよヒナタちゃん。よく頑張ったね」



尚もチャクラを流し続けながら微笑みかけると、不思議そうな顔をして私を見るヒナタちゃん。



「この人はユウナさんって言って、綱手様の一番弟子で私の姉弟子なの。ユウナさんが治療してくれたのよ」

「…そう、だったんですか。ありがとうございます…」

「こちらこそ。ナルトのこと、助けようとしてくれてありがとう」

「!」



真っ白な目をまん丸にして私を見るヒナタちゃん。
穢れを知らない、真っ直ぐ強い目だ。こんないい子に想われてナルトは幸せ者だね。



「サクラちゃん、まだ傷は塞がってないから後はお願いしていい?」

「っはい!」

「アスマ、サクラちゃんにチャクラ分けてあげて。もうきっと切れかけてるから」

「それはいいけどよ、お前はどうすんだ?」

「私はまだやることがあるから」



そう言ってもう一度胡座をかいて目を閉じようとした。するとカツユ様が私の肩に乗ってぐいっと顔を覗き込むように身を乗り出した。



「ユウナさん、あなたももう…」

「私は大丈夫です。チャクラの経由お願い出来ますか?」

「!…その必要はないみたいです」

「?」

「ナルトくんが…ペイン本体の説得に成功したようです!」

「!…本体?それに説得って、」

「そしてペインが転生術を施して、この騒動で亡くなった方々が生き返っています!!」

「!?生き返ってる…?」



転生術を、あのペインが?
にわかには信じられないカツユ様の話。ナルトは尾獣化してペイン天道を追ってったはずだけど…。

…ちょっと待って。
この騒ぎで亡くなった人たちが生き返ってる、ってことは…



「っ!」

「ユウナさん!?」



チャクラ切れ寸前で怪我してることなんて忘れて弾かれたように立ち上がり一目散に走り出す。
まさか、本当に…!?




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