大切なもの2

□師として、母として
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「飯はこれだけか!?まったく足りんぞ!!」

「そんな我が儘言わんでくださいよ。今の食糧不足の中でこんなに調達してくるのがどれだけ大変だったか…」



目が覚めてから一向に衰えないあたしの食欲に呆れかえっているのはカカシだ。

こいつとシズネから、あたしが眠っている間のことはおおよそ聞いた。
あたしが倒れている間にユウナが再び里を出たこと。表面上、意識不明のあたしの穴を埋めるという理由で六代目の座に仮就任したのがダンゾウ。だが奴は抜け忍であるうちはサスケに兄の敵として殺され、そして本当の火影としてカカシが就任しようとするさ中にあたしが目を覚ましたということらしい。

そして、ヨク伝手のユウナからの情報で、第四次忍界大戦が間もなく開戦するということ。そしてその首謀者は、おじい様のライバルのような存在だったうちはマダラだと伝えられた。


目の前に積みあがった皿の上に最後にドン、と置いてカカシを見ると、奴も途端に神妙な顔になる。



「…首謀者がマダラだってのはたしかなのか」

「俺も一度鉄の国で出くわしましたが、仮面をかぶっている奴の奥の瞳は写輪眼でした。マダラなのか確証はありませんが、うちは一族の者とみてまず間違いないかと」

「だが、うちははイタチ亡き今サスケしかいないはずだろう。そのサスケも暁と共に行動しているんだろう?」

「…えぇ。それに関してはユウナが追ってくれています」



ヨクからカカシへ大戦開戦の報告があったとき、余談だが、とユウナの意志とは別にヨクの独断でカカシにその話があったらしい。ダンゾウが葬られる場に立ち会っていたらしいカカシは、マダラと思われる男にユウナとともに時空間に連れていかれるサスケのことも確認したとも言っていたしな。



「…しかし。サスケがまさかイタチと同じ道を歩むとはな」

「…必ずしも同じとは言えないのがつらいところではありますが。先ほど申し上げた通り、イタチが里を抜け暁に入ったのはサスケと木ノ葉を守るためでした。でもサスケは木ノ葉を潰すための力を得るため。自分の守りたかったものが守りたかったものを壊すというのは、イタチはきっと望んではいませんよ」

「…そうだろうな。あたしも少ししか知らんが、イタチは優しく、幼いながら火影と同等の考えを持つ男だったと聞いている。うちはのクーデターも起きず、奴もサスケも木ノ葉にいたらと考えると、少しばかりむなしくなるな」

「…えぇ」



肩にある賭けの羽織を戻しながら、はあ、と息を吐いた。



「とはいえ今あたしたちが最優先しなければならんことは大戦への準備だ。時間も多くはあるまい。食糧の備蓄、忍具類等の確認はぬかりなくな」

「御意」

「あと医療道具類も充実させておいてくれ。少しでも負傷者の治療を円滑にするためだ。頼んだぞ」

「はい、伝えておきます。…そうだ綱手様」

「?なんだ」



おもむろにポーチを漁ったカカシが差しだしたのは、一通の手紙。



「なんだこれは」

「ユウナが里を出る前に、綱手様の目が覚めたら渡してくれと預かっていました」

「…そうか」



「では、俺はこれで」と気を利かせたのかカカシが出ていってから、ゆっくりとその手紙の封を開いた。




綱手様

これを読んでいるということは目が覚められたんですね。よかったです。いつも勝手ばかりで本当にごめんなさい。3年前も、勝手に出ていった私をずっと信じ続けてくれて、たくさんたくさん心配してくださっていたと聞きました。本当にありがとうございます。

もうカカシかシズネから聞いたかとは思いますが、私はまだやることが残っているので里を出て暁に戻ることにしました。ですが、これだけは約束します。私はどんなときでも必ず、綱手様や木ノ葉の仲間たちの力になります。私にできることがあればなんでも言ってください。もしこっちでなにか情報がつかめたら、ヨクを通して連絡します。

まだ目が覚めたばかりだと思うので、私からはこれくらいにしておきます。くれぐれも無理はしないでください。シズネやサクラちゃんの言うことをしっかり聞いてくださいね。

最後に。綱手様が師であることが、私の一生の誇りです。ではまた。





「…馬鹿弟子が」



数年ぶりに見たあいつの綺麗な字に、笑ってしまったあたしの頬を伝ったのは温かい涙。


本当に、お前は師匠不孝者だ。どれだけあたしに心労をかけたら気が済むんだい。
何の連絡もよこさずいなくなって、やっと帰って来たと思ったらあたしの意識がないうちに、また勝手に出ていくなんて。お前は本当につくづく不孝者だ。

…だけどね、ユウナ。
お前があたしを誇りに想ってくれているように、あたしだってお前のことを想っていることを忘れるんじゃないよ。いつまで経っても、何処にいたって、


おまえはあたしの、大切な弟子だ。




師として、母として
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