大切なもの2

□ちいさな本音と、誓い
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「……遅かった、」



マダラからイタチくんの事件の黒幕を聞いて飛び出していったサスケたちを追って鉄の国に来たけど、そこにはもうサスケの姿はなかった。元の形が想像すらできないほどぼろぼろに荒れ果てた、たぶん議場だったんだろう場所。激戦の余韻なのか、今もまだパラパラと天井から砂ぼこりが落ちてくる。



「え、なんでここにあんたが!?」

「!…あんたは、」



たしかサスケの仲間の、水月だったか。他の2人も水月と一緒に来たのに肝心のサスケだけがいない。



「サスケは?」

「なんか、ダンゾウってやつを追って飛び出してっちゃって。もう僕も何が何だか」

「どこに行ったかは?」

「俺たちは何も知らない。だが、サスケがダンゾウって男に異常なまでの復讐心があるのは目に明らかだ」

「…うん、私もそう思う」



私がイタチくんから聞いた話のそれ以上に深い部分をマダラは知ってた。
イタチくんにあの任務をやらせたのは他でもないダンゾウ、そして三代目を含む上層部数名。穏健派である三代目はきっと他に何か策がないか考えただろうけど、武闘派のダンゾウや他の連中がそれをぬくぬくと待つわけない。きっとその意見を押し通してイタチくんに全ての罪を背負わせたんだ。

イタチくんの人生を大きく変えて弄んだあいつに腹が立ちすぎて、思わずぎゅっと拳を握った。



「…なぁ、あんた」

「?」

「…あんたにとって、サスケはなんなんだ?」

「…」



訝しげに私を見ながらそう言う香燐。
何って言われても、私にはこうしか答えはない。



「弟、だよ。だからどうしても間違った道に進ませたくない」

「…そうか」

「貴様がユウナか」

「!!」



完全に油断してた背後から、突然の襲撃。
思わず反射的に飛びのけば、そこにいたのは雲隠れの長。



「雷影…」

「ほう、わしのこのスピードを避けるとは。貴様なかなかの手練れだな」

「雷影が私に何の用…」

「そう急くな雷影。こいつは火影の一番弟子だ」

「!!」



その隣に現れた男に目を疑った。
砂隠れの風影、我愛羅。この子はデイダラとサソリの手に落ちて尾獣を抜かれて亡くなったはず。なんで、生きてるの。なんで、ここにいるの…。



「…なん、で…」

「俺は暁の手に落ちた後、ナルトたちに救われ今もこうしてここで生きている。守鶴は俺にはもういない。だがもうこれ以上お前たちの思惑通りにはいかせんぞ」

「……よかった、」

「!」



思わず小さな、本音が漏れた。
我愛羅が息を引き取ったのをたしかに確認したけど、たしか綱手様の資料をこっそり見たときに、砂の里には重役以上しか知らない医療忍術の延長にある転生術があるって見たことがある気がする。そうか、あれは本当でそれを使って彼は今生きてるのか。よかった。

そんなことを思いながらちらりと雷影の方を見ると、よく見ると左腕がない。相当な大怪我なのに簡易的すぎる処置しかしてないから包帯には血がにじんでる。これじゃあ化膿して今以上にひどい傷になる。医療を扱うものとして、黙っていられない。



「!…貴様何を、」

「…彼女のしたいようにさせておけ、雷影」



つかつかと雷影のところへ行き、掌仙術を施す。
しばらくチャクラを当てれば、傷口の止血はすんだ。ここまでしておけばひとまずいいだろうと、それだけ終わればそっと雷影に背を向けて歩を進める。



「待て」

「…」

「貴様、なぜ敵であるわしの治療をする。ここでこうすることで貴様になんのメリットがある」

「…メリットなんていらない」

「…なに?」

「目の前で血を流している人がいれば、私はそれがたとえ大悪党だろうと、そのあと私を殺しに来るとしても治療する。それで私がどうなろうが気にしません。だからメリットなんていらない」

「…なぜそう思う」

「それが、私が師の背中を見て学んだことです」

「!…綱手姫か」

「…あの方は、生涯たった一人の敬愛する師です」



背中越しにそう雷影に言って、鷹の3人に向き直る。



「あんたたちはもう好きにすればいい。サスケのことは私に任せて」

「!でもサスケはそれで納得しないよ」

「…そうだろうね。でも私はあの子を正しい道に戻さなきゃならないんだ」

「…なんであんたがそこまで…」

「言ったでしょ香燐、サスケは私の弟みたいな存在なの。間違ったことをしようとしてるなら、それを正してあげられるのは私だけだと思うんだ。…あの子のお兄さんとも、約束したしね」

「…」

「今までサスケについてきてくれてありがとう。都合がいいかもしれないけど、これからももしサスケが頼ってきたら、どうか支えてあげてほしい」

「…あんたに言われなくても、わかってる」

「ありがとう」

「あぁ。水月、香燐行くぞ」

「えぇっ!?ちょ、重吾!」

「…ユウナ」

「?」

「サスケのこと、頼んだ」

「…任せて重吾」



そう重吾に頷いてちらりと影2人に目を向けた後、呼び出したヨクの背に乗ってサスケを追った。




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