大切なもの2
□苦しみ抜いた先に、いつか
1ページ/1ページ
「これを、お前たちにって預かってきた」
そう言ってカカシ先生から差し出されたのは2通の手紙。
「ユウナから」とどこか寂しそうに笑った先生。
ユウナさんは木ノ葉にいるのになんで手紙なんか…。
その瞬間、なんだか嫌な予感がしてしまって。
「?ユウナの姉ちゃんは木ノ葉にいんだろ?なんでわざわざ手紙なんか」
「…それがね、あいつまた里を出たのよ」
「なっ!」
「!」
「なんでだってばよ!?」
「調べることがあるとかなんとかで、それはユウナにしかできないことらしくてね。それでさっき見送りしてきたんだ」
「…そんな、」
「まだ綱手のばあちゃんだって目ェ覚めてねぇのに!」
「みんなに会っていくとまたつらくなるから、だってさ。もし綱手様の意識があったら必ず止めてただろうからね。…ま、俺は止めきれなかったんだけど」
そう言って少し悲しそうに笑うカカシ先生に胸がきゅっと詰まった。
カカシ先生は昔からユウナさんのことを想ってて。ユウナさんが3年前に里を出て行ったときも誰よりもユウナさんを信じて、1日でも早く帰れるようにって寝る間も惜しんで任務に就いて、そして3年経ってやっとユウナさんが帰ってきた。
でも、そのユウナさんはまた木ノ葉を出た。
きっとカカシ先生だって精一杯止めたはず。誰だって大切な人が自分のそばからいなくなるのは嫌だから。
「いたいた!おい!」
「!…キバ、どうしたの?」
そんなことを考えているときに現れたのは、赤丸に乗って血相を変えたキバで。
「いいか、落ち着いて聞けよ」
「…」
「…綱手様が火影を解任された」
「!」
「は?」
「六代目はダンゾウって人に決まったみてぇなんだ。俺もよく知らねぇんだけど、裏の人間らしい」
「ダンゾウって!」
「…嫌な予感がするな」
「驚くのはこれだけじゃねぇ。その六代目は抜け忍として、」
「…」
「サスケと、ユウナって人を始末する許可を出しやがった」
「!!」
「っなんでこんな急に…!」
「…サスケもユウナも抜け忍だ、通常は抹殺するのがセオリー。綱手様だからこそここまで穏便にすませてくれていただけの話だよ」
そう言いながら苦しそうに地面を睨みつけるカカシ先生にいても立ってもいられなくなって、気づけば足が動いてた。
「私、ダンゾウって人と会ってくる」
「俺も行くってばよ、サクラちゃん」
「ちょっと待てお前ら!」
そんな私とナルトの腕を掴むカカシ先生。その顔はやっぱり苦しいような辛いようなそんな悲しい顔をしていて。
「…今ダンゾウに会いに行くのは得策じゃない」
「でも…じゃあどうすればいいんだってばよ!このままじゃサスケもユウナの姉ちゃんも殺されちまうんだぞ!!」
「そんなことはわかってる!!」
「!」
「!」
いつもは決して怒ったり声を荒げたりしないカカシ先生の初めて聞いた大きな声に目を見開いた。
先生は自分を落ち着けるように深呼吸をすると私とナルトを真っ直ぐ見つめる。
「ナルト、お前は九尾を持ってる。そしてあの人…ダンゾウはその九尾を里から出すべきじゃないと考えてる。綱手様が目を覚まされていない今、まだ仮とはいえあの人が火影だ。今お前が行けば牢にぶち込まれてサスケやユウナどころの話じゃなくなる。時期を待つんだ」
「っ、でも…」
「お前たちはあの2人のことになると熱くなりすぎる節がある。気持ちはわかるが少し冷静になれ」
「…なんで…なんで先生はそんなに冷静でいられるんですか!」
「!…サクラちゃん」
「先生はユウナさんのことが好きなんでしょ!好きな人が殺されちゃうかもしれないときになんでそんなに落ち着いていられるんですか!!」
そんな先生の言い分に気づけば掴まれた腕を振り払ってそう叫んでる私がいた。
カカシ先生が言ってることもわかるし無理に自分を落ち着けてるのもわかってる。だってナルトを諭すカカシ先生の目はとても悔しそうに見えるから。でも、わかっててもそう言ってしまう私がいた。
「…俺だって平気なんかじゃないよ。今もダンゾウのことを殴り飛ばしたくて仕方ない」
「それじゃあ…」
「でもユウナは約束してくれたから。必ず生きてまた会おうって」
「!」
「!」
「だからあいつは絶対殺されたりしない。俺はあいつを信じてる」
「それに、簡単に殺されるほどユウナもサスケも弱くないでしょ」
今度は真っ直ぐ私を見て、にこりと微笑んでそう言うカカシ先生に言葉が詰まった。
つらくないわけない。私がサスケくんを想うよりもずっと長く、先生はユウナさんのことを想ってる。そして、信じてる。すごく不確かなことだけど、なんでかその言葉が心にぐっと刺さった気がして。
人を好きになるって、ほんっとしゃーんなろーよ。
「…わかったってばよ。俺ってば今はダンゾウって人のとこ行くの我慢する」
「!…ナルト」
「俺ってばカカシ先生と一緒で、サスケのこともユウナの姉ちゃんのことも信じてっからよ!」
「…そうね」
私もナルトもカカシ先生も、みんながそれぞれにいろんな想いを抱えて生きてる。
それは簡単なことじゃないし受け入れるには時間がかかったりするかもしれないけど、それでも信じたい。そんな風に思った。
苦しみ抜いた先に、いつか