大切なもの2

□来るとは思わなかった未来
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「万象天引」

「!」



そう呟かれたペインの手がこちらに向くと、想像を絶する力ですっ飛ばされた。
土壁に激突したことでがはっと口から血を吐く。



「姉ちゃん、大丈夫か!」

「…平気、このくらい…っ!」



危うく飛びそうになる意識をなんとか堪えながら立ち上がる。
するとこっちに向いたままの手のひらに今度は思い切り引き寄せられる。何度も見てはいたけどこれほどまでの力だとは思わなかった。
抵抗する間も無く段々とペインに近づいて行く。

殴り飛ばしてやろうと拳にチャクラを集めると腹部を襲った違和感。



「!!ユウナの姉ちゃん!!」

「……っ」



ゆっくりと下を向くと、ペインの黒い棒が私のお腹を貫通していた。
不思議と痛みは感じない。痛みより苦しさより、情けないと思う自分がいた。口の端からつーっと血が垂れる感覚がする。でもこんなところでやられてたまるかと力の入らない体に鞭打って、一本傷の入った額当てをするりと取る。怪訝な顔を向けるペインに口元を上げて印を結ぶ。



「!」

「…陰封印・解」

「…お前、」

「忍法・創造再生!」



お腹に刺さった棒をずぷりと抜いて、よろけそうになる体でなんとか地面に足をつける。
顔を体を、百豪の術を解放したことによる模様が埋めていく。

修行で里を出てた時から密かに修行してた綱手様の秘術、創造再生。
私の額には、綱手様と同じ百豪の印がある。暁にいた3年間はもちろん、その前からずっとその百豪の術で溜め続けてたチャクラ。その多量のチャクラを使う創造再生は、デメリットから綱手様が禁術に指定したから決して教えてもらうことはなかったけど、自分なりに研究してたそんな術がついこの間やっと会得できた。



「私を甘く見てもらっちゃ困るよ、ペイン」

「…貴様」

「私は伝説の三忍、綱手様の一番弟子。あの方と10年一緒にいて術や知識や何もかも盗み、そして強くなった」

「…」

「あの方は医療忍術のスペシャリスト。だけど、三忍と呼ばれた由縁はそれだけじゃない。自来也様の弟子のあんたならわかるでしょ」

「!」

「創造再生。額に溜めた大量のチャクラで各種タンパク質を刺激して細胞分裂を急速に早める、回復ではなく再生能力。…これでわかった?」

「…っ」

「私は戦いの上では死なない」

「!」



「ただあんたたちの駒になるためだけに、あんな陰気臭いとこに3年もいたわけじゃないんだよ」そう言い終わった時にはもうお腹に傷はなかった。

これ、バレたら綱手様に怒られちゃうなぁ。禁術に指定した術を勝手に会得しちゃったんだもん、そりゃ怒って当然だ。人の一生の細胞分裂の回数は決まってる。それを急速に早めるということは、イコール寿命を縮めるということ。だから綱手様はこの術を自分しか使えないように禁術にして、決して弟子である私やシズネに教えることはなかった。



「…さすがあの人の弟子。転んでもただでは起きんか」

「当たり前でしょ。ナメんなっつーの」

「姉ちゃん、その術…」

「私は大丈夫。さぁ、やるよナルト」

「…おう!」



でも私は何が何でも木ノ葉を、大切なものを守る。たとえ、この命が尽きたとしても。

ナルトと一緒にペインに飛びかかる。
まさかナルトと一緒に戦えるとは思ってもみなかった。こんなに強く逞しく真っ直ぐに里や仲間を想う彼を、素直に誇らしいと思った。





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