大切なもの2

□奇声を上げる復讐心
1ページ/1ページ





「…ペイン」



気配を極限まで殺してじりじりと迫りながら様子を伺う。

視界の先にはナルトとペイン天道が対峙している。
6人いたはずのペイン六道は今や天道ただ1人。まさかナルトがここまでやるようになってるなんてびっくり…でも、誇らしいよ。



「!」



そんなことを思いながらチャクラを込めた拳でペインをぶん殴る。
すっ飛んでいったペインを見届けながらすとん、とその場に降り立った。



「…ユウナ、姉ちゃん」



驚いたように目を見開くナルトに振り返る。



「強くなったね、ナルト」

「帰ってきたのか!」

「うん、いろいろごめんね」



すると悔しそうに唇を噛むナルト。たぶんカカシのことだろうと想像がつくわけで。



「…ごめん、ユウナの姉ちゃん…俺ってば、」

「カカシにはもう会ってきた」

「!」

「ナルトが謝るのは違うよ。それより今は…」



そこで言葉を区切り起き上がってきたペインに目をやる。
すると、ナルトが私とペインを阻むように背中を向けて。



「やっぱごめん、ユウナの姉ちゃん。ここは俺にやらせてくれ」

「…」

「木ノ葉やエロ仙人やカカシ先生…、俺の大切なもんぶっ壊したんだこいつってば。やっと出来た、俺の繋がりを」

「…っ」

「それにこいつ、ユウナの姉ちゃんをずっと苦しめてただろ。俺のことを認めてくれて友達だっていってくれた姉ちゃんを…。俺ってばそれも許せねぇんだ」

「…ナルト、」

「ユウナの姉ちゃんの憎しみは俺が引き受ける。姉ちゃんの言った通り、俺ってば強くなったからよ」

「…」

「だから、ここは俺に任せてくんねぇか?絶対ぇこれ以上こいつの好きにはさせねぇからよ」



そう言ってこちらに向かってくるペインを睨みつけるナルトのその背中に、彼の師である自来也様と父であるミナト先生の姿が重なって見えた気がして全身が泡立つように震えた。


ナルトは、自来也様さえかなわなかったペインに立ち回ってる。その強さはもはや木ノ葉一、いやそれ以上かもしれない。仙術は自然チャクラを取り入れて桁外れの力を手に入れることができるって聞いたことがある。だったら普通の忍なら手を出さない方がナルトにとってはやりやすいだろう。

だけど、私はここで引くわけにはいかない。私にだって火の意志がある、プライドがある。命よりも大切な故郷を、何に代えても守りたかった大切な人を、私から全てを奪い去ったこいつを絶対許さない。

すっと、ナルトの隣に立つ。



「!…ユウナの姉ちゃん」

「お願いナルト、私にも戦わせて。絶対足手まといにはならないから」

「…でも、」

「あのときこうしておけば良かったって後悔だけはしたくないの。私にとって、木ノ葉は守りたい大切な故郷。そしてカカシは、なによりも守りたかった人。…ナルトなら私の気持ちわかってくれるでしょ?」

「…」

「…だから、お願い」

「話し合いはすんだのか」



ナルトに懇願の眼差しを向ける私を冷めたような目で見るペイン。
潤む視界を堪えて憎き相手を負けじと睨みつける。



「ユウナ、やはりお前はそちら側につくのだな」

「…そちら側も何も、私はもともと木ノ葉の忍。先に約束破ったのはあんたでしょ」

「…“忍は裏の裏を読め”。木ノ葉ではそう習わなかったか?」

「!っ…木ノ葉を、カカシを…よくも…っ」

「これでお前もやっと理解できたな。大切なものが奪われるこの痛みを」

「…あんたなんかに言われなくたってずっと痛いんだよ。あんたたちに言われて木ノ葉を出たあの日からずっと!!」



忍のくせに冷静を欠いて感情の赴くままペインに飛びかかる。

でもさすがは暁のリーダー。真っ正面からいっても勝ち目はない。わかってたけど、それでも体は止まってくれないわけで。


やっぱり私の心は復讐心に染まっているらしい。





奇声を上げる復讐心
次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ