妄想部屋
□男らしさ
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やっと思いが通じ合い、真澄とマヤが付き合い出して、2ヶ月目が経過した。
漸く、お互いにぎこちなさがなくなってきたように思う。
とはいえ、洗練された立ち振る舞い、煙草を吸う美しい長い指先、耳元で囁かれるバリトンボイス…。
大人の男性の魅力に溢れる真澄に、マヤは未だにドギマギとしてしまう。
そんな二人のもっぱらの悩みは、なかなか二人きりの時間が作れない事だ。
そのため最近では、真澄が会社の近くで借りているマンションで過ごす事が増えている。
以前は、真澄が仕事が深夜になった際にしか利用しなかったマンションだが、二人きりの時間を過ごすにはうってつけだ。
「チビちゃんの前で格好つけてもしかたないからな。」
そんな事をいいながら、真澄は決して外では見せない寛ぐ様子を、マヤの前では見せてくれる。
ルームウェアで長い足をオットマンに投げ出し、ビールを飲みながらソファーでTVを見る。
そんな姿にも、マヤは胸をときめかせてしまう。
そして真澄も、寝起きの跳ねた髪の毛や、空腹で派手な音を鳴らす腹の虫にさえ思わず愛しさが溢れてしまう。
どんな姿であっても魂の片割れへの愛情は薄れるはずもない…筈なのだが…。
マヤには真澄の行動で、どうしても気になって仕方ない事があるのだ。
それはトイレに行く際、時折真澄は全裸になる事である。
服を来て入る時は早々と出てくるので、おそらく小さい方の用を足しているのであろう。
大きい用を足すために、几帳面にイソイソと、正座で洋服を畳んでからトイレに入る人間をマヤは見たことがない。
そんな姿を見る度、どこか異様に感じてしまうのだが、成人男性では珍しくない行動なのか否か…。
幼い頃に、父親を亡くしたマヤには判断がつかない。
しかも、たまに大きな声が聞こえる時がある。
初めての時はギョッとして、大きな声が聞こえた後、何かあったのかと、思わずトイレのドアを叩いてしまった。
返ってきた返事が
「いや、何でもない。気にするな。」
気にするなと言われても、気にはなるものは気になる。
が、何となくそれ以上聞にくい。
しかし、ハプニングが起きたことにより真澄の秘密が明らかになる。
マヤは撮影が終わり、真澄のマンションに向かっていた。
道中、尿意を覚えたので早足でマンションの中に入り、急いで合鍵を使いドアをあける。
部屋の灯りはついていたし、真澄の靴も玄関にキチンと揃えてあった。
何より真澄の服がトイレの側に畳んであったのだが、急いでいたため気づかない。
もとよりオッチョコチョイなのである。
ここで真澄が鍵をかけていれば、マヤが真澄の秘密に気づくのはもっと後になったであろう。
マヤがトイレのドアをガチャリと開けると、そこには全裸で足を大きく広げ便器を挟み、両手を広げ、側面の壁に手をつく真澄がいた。
「速水さん…それは何してるの?」
可愛く小首を傾げマヤが聞く。
「脱糞だ。」
真澄は有能な社長らしく、簡潔に明確に答える。
「何か違う。そんなやり方…変だよ。」
マヤの中で、アトラクティヴな真澄のイメージが崩れていく。
「いや、チビちゃん。この方が爽快感が味わえるんだよ。多少水が飛び跳ねるのがたまに傷だが、服を脱ぐ事により回避が出来るし、トイレクイックルはいつも大量に常備している。体もついでに拭くが、肌があれたこともない。ぬかりはないぞ。」
仁王立ちのまま真澄は答える。
「…なんかヤダ。」
マヤの表情は暗い。
「マヤ…座って脱糞は女子供がすることだ。男は黙って…男は黙って立ちグソだ!!」
女子供は黙ってろと言わんばかりの迫力に、マヤは思わず言葉を飲んだ。
「ウワァァァァーーーッ!!!」
真澄は咆哮をあげると両手両足をつっぱり腹筋に力を込めた。
放屁とともに黄金が勢いよく便器に落ちる。水飛沫がマヤの顔面にも一雫頬に跳ねた。
目を見張り見つめるマヤ。
『男らしい…男らしいわ…速水さん…。』
野生を思わすその姿にマヤは頬を染める。
「こんな俺は嫌いか?マヤ。」
マヤは首を激しく振りながら答えた。
「ううん!ううん!速水さんは脱糞してても素敵よ!」
真澄は体の力を抜くとマヤに近づきそっと頤に指を添え顔を上げた。2人の視線が絡み合う。
「マヤ、トイレがしたいんだろう?さあ、交代だ。」
うっとりと見つめるマヤに、トイレクイックルを手渡すと、優しいキスをひとつおとして、真澄はトイレを立ち去った…。