妄想部屋
□ジューンブライド
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6月某日
空は澄み渡り、陽光が燦々とチャペルに降り注ぐ。
幸せな二人を祝福するように…。
この日、姫川亜弓は、良きライバルであり長年の友である北島マヤと、所属する芸能事務所社長である速水真澄の結婚式に招かれていた。
真澄は鷹宮紫織との婚約を破棄し、2年の禊の日々を耐えた。
北島マヤは紅天女の試演を見事勝ち抜き、今や実力派女優としてその地位を不動のものとしている。
そんな二人が、漸く晴れて今日の日を迎えたのだ。
人との関わりに壁を作ってしまう亜弓にとって、この二人の存在は特別だ。
そんな彼らが、困難を乗り越え結ばれた事に、胸の中に暖かな喜びがひろがっていく。
この後、都内のホテルにおいて、700人もの招待客を招いた披露宴が予定されているものの、今しがた終わった結婚式は、親族やごく親しい者のみが出席した穏やかな心温まる式であった。
式場は、チャペルと大きなホールがアールデコ調のドアで仕切られており、隣接したガーデンの大きなガラス扉が開放されいる。
ガーデンでは、配置されている華奢な白いテーブルとチェストが、芝生の緑と美しいコントラストを織りなしている。
そこでは、既に何人かの招待客が、色とりどりに咲き乱れる薔薇の花を楽しみながら、穏やかに談笑していた。
ホールでは冷たい飲み物や軽い軽食類が用意されており、亜弓はアイスティーを手に取りガーデンへと向かった。
ガーデンで、幸せそうな笑顔で写真に応じる2人を眺めていると、ハンカチで額を抑えながら水城が近づいてくる。
「亜弓さんごきげんよう。流石女優さんね。暑いのに汗一つかいてないのね。」
「水城さん、お久しぶりです。顔は何とかなっても脇汗だけはコントロールできませんわ!」
水城と会話を交わしていると、マヤがこちらに気がつき、真澄の袖を可愛く引っ張りながら近寄ってくる。
「亜弓さん!水城さん!今日は来てくれてありがとう!」
「おめでとう、マヤさん!本当に綺麗だわ!」
亜弓はお世辞でなく、感嘆の声をあげた。
最高級のシルクで設えたウェディングドレスは、シンプルながら、マヤの華奢なデコルテを美しいカットで強調し、すそはたっぷりと使われたチュールで可愛らしくプリンセススタイルに広がっている。
何より黒く潤んだ大きな瞳と赤い唇、繊細ななレース使いのマリアベールから除く血色の良い頬は、さながらかすみ草に縁どられたピンクの薔薇のブーケのようだ。
「マヤちゃん、パンティーの履き心地は如何かしら?」
水城がマヤに声をかける。
(パ…?パンティーですって⁉)
亜弓は思わず、水城に訝しげな顔を向けた。