□顕現
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「さて、主から命を受けたわけだし
改めて、私は大太刀の石切丸という
現在は神社に奉納されていてね
御神刀、と分類されることもあるかな」


『私は時の神に調整のために作られた刀剣女士
名をつけてもらえなかった打刀です
ミナトと呼んでください
よろしく、です』


「神に作られた刀、なるほどね
通りで神気の他にも交じりがあるわけだ
君は、もしかして刀になる前に何か生き物だったりしたのかな?」


うわお
これは人間だったことを言われてるんだよね
でも、言って良いこと、なのかな


『私は時神の使い
先も言った通り、作られたばかりです』

はい、勝手に話してくれたよ、この口
とりあえず、そういう設定ね


「そうなのか?
俺は人の姿を持ったことがあるのかと思ったんだが」

それは、正解なんだけど
なんでばれた?
取り敢えず首を傾げておく


「普通、権限された時に初めて肉の体を持った俺たちは立つのも困難なんだ
比較的体の軽い担当たちでも転けるらしい
かく言う俺も、上手く立てずに尻餅とやらをついたな!」

…言いたいことはわかったけど、幾つか変換間違えてる気がする
たんとう、は短刀のことかな
あたしは自分のこと打刀って言ってたし


「だから、君は体に慣れているのかと思ったんだがな」

『私は時神の使い
それ以外の何物でもありません』

うん、嘘じゃない
嘘はついてない、本当のことも言ってないけど

それから、2人がかりであたしがなぜ呼ばれたのか
刀剣男士とは何か、敵は何かと最低限必要なことを教えてくれた
時々脳内で補足が入るから2度聞きすることもなかった
1番驚いたのは今の世が私が生きていた時代ということだ
可能性として高いのは、パラレルワールド、か
本丸も案内してもらった
今日は休息日らしく、短刀だという子供たちが庭で遊んでいた


『あれ?休息日なのに私を呼び出したのですか?』

「あぁ、政府が日課というものを要求してくるからな
毎日鍛刀と刀装作りを3回ずつ
それと出陣が1回だったか?
これだけは必ずやらなければならないんだ」

政府、か
また新しいのが出てきたな
つまり、審神者というのは1つの職業


『私も、出陣、するのですよね
うまく戦えると良いのですが』

「君、本来は刀なんだ
そんなに構えずとも自ずと体が動くだろう?」

石切丸さん(様をつけたらやめて欲しいと言われた)は用事があるとかで途中で別れたから、今は鶴丸(そう呼べと言われた)と本丸散策中だ
主さまの命令というのも頼みごと感覚でいいみたいだ


『いえ、私は使われたことはない、生まれたばかり
戦場なんて知りません』

「あーそう言っていたな、なら、俺が明日にでも稽古をつけてやろう
なに、俺も練度はまだ低い方だからな
あまり力量差はないさ」

力量差、それって男と女の時点でかなりあるんじゃ
ま、柔道使えばいいかな


『では、お願い致します
早く主さまの役に立ちたいですからね』

ところで、あたしが話すたびに鶴丸が唸るのはどういうことなんだ

「いやーなんだ?なんか違和感があるんだよな……
あぁ、分かったぞ!君の話し方だ!」

え、話し方?
なんか変なところあるのかな
時代は同じみたいだから特に気にしてなかったけど


「君、本当は敬語などほとんど使わないんだろう?それに、俺に向かって敬語で話すのは光坊と」

「鶴丸さま!その方は新しい仲間ですか?」

「うん、まぁ一部の短刀達だけだ
あぁ、そうだぞ
さっききた刀でな、ちょっと特殊だから主から後でちゃんと説明がある
ほら、ここに留まっていると鬼が追いかけてくるぞ」

「?!あ、じゃあまた後できちんとご挨拶させてくださいね!」

おお、早い
おそらく今のが短刀の付喪神なんだろうな
それにしても可愛い見た目をしてた


『敬語、ですか
うーん、まぁ、鶴丸になら話せる、かな』

「俺にならというのが気になるところだが、あぁそちらの方が良いな」

『うん、ならこうする
ところで、今度はどこに向かってるの?』

あらかたの場所は案内してもらったと思うんだけど

「君の部屋と主の部屋だな
主の部屋は短刀達の遊ぶ声が聞こえないように奥に作られていてな
まぁ最初は違う場所にあったと聞いてるぞ」

『そっか、あたしの部屋、まだ知らなかった』

うん、今まで通りの喋り方にしても勝手な修正が入らない!
やっぱり喋りやすい
1人で感激してるうちに部屋についてしまった
さっきまで聞こえてた遊び声も確かに聞こえない
仕事をするにはちょうど良い場所ということか

「ん?中に他の奴がいるな
主、ミナト嬢を連れてきたぞ」

待て、鶴丸
なぜ呼び捨てじゃなく嬢なんてつけるんだ


「あーうん、入っていいよ
切国くんはそこにいて?」

仕方ない、後で直すことにしていまは


「失礼するぞ」『失礼いたします』

促されるまま主さんと対面する様に座る
主さんの横には布を被った男の子?がいて、鶴丸はその人と反対の横に座った
のだけど、主さんはそれに少し驚いてた

「あー国永くん?もしかして君も聞いてくつもりなの?」

「お?なんだなんだ、俺は聞いちゃいけない話か
なら、鶴爺は退散しよう
後でみんなに話すんだろうからな
そのときに聞くでも構わないさ」

『あ、えっと鶴丸、案内ありがとう』

「あぁ、じゃあまた後でな」

鶴丸はそのまま出て行って、足音が遠ざかったところで布の彼が話し出した

「俺は、翠玉の初期刀、山姥切国広だ
言っておくが、写しだからと侮るなよ」


写し?
へぇ、別の名刀を国広って刀工が真似して作った
なるほど、ただのコピーじゃない、うーんあれか、カバーみたいな感じか


『私は無銘の打刀、呼び名はミナトと
よろしくお願いします』

「自己紹介したとこで、私から話があるの
切国くんは私の初期刀だから、一緒に聞いてもらうけど、良いですか?」

もちろん、構わない
今の私が彼女に使役される刀であることは理解してるから、不思議な感覚はするけど
それでもなぜか嫌だとは思わなかった

「ありがとうございます
先ほどは慌ただしくしてしまったのだけど、政府に貴女のことを報告したところ、すぐにでも登庁するよう指令が出ました
貴女が良ければ、明日登庁しようと思いますが」

『ええ、主さんのお考え通りに
ところで、主さんは皆に敬語を使われませんよね?
私にもそのようにしてください
女士のため異質でしょうが、大事にされるのは慣れてません
それに、人の見た目では主さんと私は同じほどでしょう?』

「うーん、そうだね、じゃあ今からはミナトって呼ぶよ
それと、ミナトも敬語、本当は使わないなら、それで良いからね!」

ああ、この方が良い
主さんは恐らく高校生か大学生くらい
審神者、という職業はよく分からないけど、働いていることを考えると18は過ぎてるのかな
いや、まず職業、なのか?


「翠玉、昼餉の時間だ」

「え、もう?うん、じゃあみんなにミナトを紹介しよう
私は先に行って、みんなに軽く説明してるから、国広くんはミナトを連れて来てね」

「分かった」

主さんはそう言うと慌ただしく出て行った

「はぁ、あれほど走るなと」

『ふふ、女の子はあのくらい元気なのがいいです』






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