“Azure”もう1つの物語

□夢からの目覚め
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「ん……(布団ふわふわだなぁ。これなら天国でも…)はっ」

えーと、ここはどこだ?
僕はどうなったんだっけ
ああそうだ、確か家の階段から落ちた
はずなんだけど、此処はいったいどこなんだ!!
階段から落ちたら違う場所にいるってどういうことだよ
とりあえず起き上がって周りを見渡すけど、こんな部屋知らない
というか、一世代前って感じがする


「あ、眼覚めたんだな、勇輝
よかった、心配したんだぞ、うちの前で倒れてたから」
えっと、この少年は誰だろう
というかなんで僕の名前知ってるんだ?

「あーっと
とりあえずありがとうございました
で、なんで僕の名前知ってるんですか?」

「え?違うの?」

いや、こっちが聞いてるんだけど


「それと、僕は自分の家の階段から落ちて気を失ったはずで
ここはどこですか?」

「…勇輝、倒れたときにどっか変なところ打ったのか?」

「一騎、勇輝君は起きたか?」

だ、誰だ?また新たな人物が


「父さん!勇輝が変だ
俺のこと分からないみたい」

「一時的なものだろう
そのうちはっきりしてくるさ
それより、お前学校はいいのか?」

「あ…、勇輝は……、俺が帰ってくるまでここにいてくれていいからな!
久しぶりに会えて、いろんなこと話したいから今日は早く帰ってくるつもりだし
じゃあ行ってきます」

「はぁ
えっと、いってらっしゃい?」

「ああ」

…………情報を整理しよう
僕は階段から落ちて、気付いたら布団に寝かされていた
さっきの男の子、えっと一騎くんだっけ、の話では
この家の前に倒れていたと
そしていまだに僕の隣に座っている人は、一騎君のお父さん
そしてなぜかこの人たちは僕のことを知っている
でも僕はこの人たちのことを知らない
それにこの家、現代にしてはちょっと古い完全木造っぽいし
どっかの島かな
家の中なのに、微かに潮の香りがする


「勇輝君、君は何なら覚えている?」

「何ならと言われても、僕はあなたのことは知りませんし、さっきの一騎くん?のことも知りません
でも、僕は確かに勇輝と言います
神谷勇輝です」

「では私も自己紹介をしなければだな
私は真壁史彦、一騎の父だ」

「真壁さん
あの、此処はどこですか?
此処は島国ですよね
なんという島ですか?」

とにかく情報を集めないと
少なくとも二人は日本人
ということは、お金さえ何とかなれば帰れるはず


「ここは、竜宮島だ」

「たつみや、島?」

そんな名前の島あったか?
僕は人並みには地理もできているはずなんだけど
そんな面白そうな名前なら聞いたことあると思うんだけど
もしくは日本じゃないってこと?

素直に聞くのが一番か


「あの、日本の東京へ帰るにはどうすればいいでしょうか」

僕がそう聞くと、真壁さんはとても驚いた顔をした


「勇輝君、君は今、帰ると言ったか?」

「え、ええ
家で母さんが心配してると思うので」

そういうと、真壁さんはまた黙り込んでしまった


「とりあえず、君は寝ていなさい
一騎が帰ってきたらまた起こす」

はい?また寝ろ、と
僕は少しでも早く帰りたい
その気持ちがこの人にはわからないのか?
でも、焦っても仕方ないか
それに、情報を聞き出すには一騎って子の方がよさそうだし
ここはおとなしく寝ていよう


「ありがとうございます
一つだけいいですか?
あなた方の知る勇輝さんは、どんな人なんですか?」

さっき一騎君が久しぶりに会ったと言ってた
つまり、最近まで会ってはいなかったけど、此処の住民だってこと
だけど、島国じゃ、そう簡単に島の外には出られないはず


「君は、昨日までこの島にいなかった
私たちも君がどこにいたのか知らない
だから、できればどこにいたか教えてほしい
だが、これだけは言える
今、東京という都市は存在していない
約三十年前に、消滅した
その前に、竜宮島の方が地図から消えたが」

「は? 東京が、もう、ない?
じゃあ!僕が今までいたところはどこなんですか!
僕は、東京という都市で十三年間母さんと過ごしてきたんですよ?!」

そういうと、真壁さんは困った顔をした


「あ、……すみません
僕が知らないことを教えてくれたんですよね
それに、僕が聞いたことでした
一騎君が帰ってくるまでに整理しておきます
いきなり叫んですみませんでした」

「いや、いい
何かあったら言ってくれ、私は下にいる」

そう言って真壁さんは部屋から出て行った

十三年間、か
さっきはそう言ったけど、僕には小1くらいまでの記憶がない
正確に記憶があるのは、小2の夏ごろから
家にはアルバムというものも存在しなかった
普通は少しくらいおぼろげにでも覚えているものだろうが、そんなこともなく、本当にない
まるで僕が夏、急に生み出されたかのように

「はぁ、今までさんざん考えたことをまた考えさせられることになるなんて
 にしても、真壁さんには悪いことしちゃったな」

……暇だなぁ
帰ってくるまでって、今行ったばっかだから、あと何時間こうしてればいいんだろう
寝るか














to be continued...



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