□さよなら、1人目のゼロ
4ページ/4ページ





外階段を登り始めたのが誰なのか見えてた

だから、これで危機は去った
スコッチは助かるんだ

って思ったのに


階段を駆け上がる音に気付いたのだろうライの背後を2人が凝視する
そして、スコッチは何かをライに言った後

まだ手の内にあった拳銃の引き金を、引いた



『あ、あ、スコ、ッチ?』


あたしの足は勝手に動いていた
なぜかはわからない
だけど、あそこに行かなきゃいけないと思ったんだ


気付くと階段を上っていて、上からライが降りてきた


「っカベルネ、か
ネズミなら、始末したぞ
携帯ごと心臓を撃ち抜いてしまったから、彼がどこからきたのかは分からずじまい
まぁ、バーボンはまだ上にいるがな」


視界がぼやけてきた
彼はこの先ずっとバーボンに恨まれたまま

終わった後に思い出したって遅いのに


ライ、赤井秀一は少しずつこっちに向かって降りてくる


あたしは動けなくて
彼はそのまま横を通り過ぎようとした
その腕を思わず掴んでいた


「なんだ?」

『あ…ラ、イ』

ライを見ても、何も言葉は出てこなくて
今度こそ彼は立ち去ろうとしたんだけど
あたしはその背に抱きついていた


「っ、おい、カベルネ?」

『お、願い、少しだけ、少しでいいからこのまま話を聞いて』

あたしはあたしのまま話した


『スコッチが、スパイであること、知ってたんだ
彼は、誰にも知られないよう、にメールを打つ時が、あったから
それに、全部、見てた、から』


人が死ぬってどこか他人事だったし
彼らは所詮物語の中の人たち
それでも今あたしの眼の前にいる人は生きてる

どうすれば彼に伝わるのか

スコッチのこと、憎まれ役を買って出た彼のこと

気付いたら頬が濡れていたけど
拭うのに手を離したらこの人は去ってしまうだろうから


涙と嗚咽を我慢して、意識が、遠のき始める
あたし、変なこと言ってないよね

彼が背負うものが少しでも減ってくれれば
1人でこの事を背負い続けなくても良いんだって
それを知って欲しいだけなんだ



『ライが、全部背負、わなくても、良い、よ
本当のこと、誰にも、言わない
あなた、の事も、知ってる、けど
ね、明美、さんを、大事に、して欲しい、から
お願い、赤井さ…』


「おい、カベルネ?」


あたしはそのまま気を失ったらしい

短い間だけど、スコッチはあたしにとって兄のような存在だったんだと思う


ねえ、助けられたはずなのにそうしなかったあたしを

本当の事を話す勇気のなかった僕を

あなたは許してくれますか?



そんな問いがあたしの頭の中に残された




to be continued....

次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ