□“僕”ができる
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あのデパート騒動の次の日、地理を把握するためにも散歩して、1つのカフェに入った
そしてそこにいたのは宮野姉妹(と2人の監視)だった
そんなに広くない店で入口はドアを開けるとベルが鳴る
つまり、店に入ってほぼすぐに宮野姉の方に見つかった

そこから話が進んでしまい、気付いたら会う約束を取り付けられていた

女子って怖い、弾丸トーク怖い

明美さんは今19才で大学に、妹は12才でアメリカ留学中らしい
今日は一時帰国してるところだと

宮野妹もとい志保ちゃんにも初めは警戒されてたけど、気づいたら仲良くなってました

その時のカフェがちょうどバイトを募集中だったので、即採用してもらうことができ、明美さんは時間があると遊びに来た

それから数ヶ月経った日、バイト帰りにどう考えてもつけられてる気配があった

余談だが、この世界に来てからあたしの能力はどこか良い方に補正されたことが幾つかあった
その1つが気配に敏感になったことだ
柔道のおかげで元から悪くはなかったが、それでも一般人の枠は出なかった
それが、今では目を瞑っていてもどの方向から何人来るかくらい分かるようになってしまった

なんとかつけてくる人を撒こうと路地を歩き回っていた時、不意に横から引かれ、抵抗する間もなく手刀を落とされた
やられたと思った
おそらく後ろは誘導
気を取られ過ぎた

意識を失う直前に見えたのは、黒いサングラスとその奥にいる人に抱えられている女の人だった








次に目が覚めると

体が縮んでしまっていた!









…なんてことはなくて、右手についた手錠が柱と繋がれていた

うん、だって志保ちゃんがまだアメリカにいるんだから、APTX4869はまだ出来てないよね


なんとなく部屋を見回す
あの黒服の時点で嫌な感じはしてたけど、当たって欲しくない
でもそのつもりで見ればわかる
何度も映画を見た、ここは志保ちゃんが捕らえられたのと同じ造りの部屋、つまりガス室だ

と、こんな冷静に頭が働いているけど、内心焦りまくりなんだ
ここで死ぬわけにはいかないし、そもそも死んだらどうなるんだ?
幸いにもブレスレットは取られていないけど、連絡は依然として繋がらない


ミナト絶体絶命大ピンチ!


ここから脱出する手立てはないかと考えていて、ドアが開いたことにも声をかけられていることにも気付かなかった


『……ってぇ!ぐ、ぅ』


気づいた時は髪を引っ張られ無理やり顔を上げさせられた時だった


「君が、シェリーから情報を聞き出したという子かな?
なるほど、まるで女の子のようだな
あの娘もまだ甘いな、こんな男に引っかかるとは」


待て、え、あたしは正真正銘女ですが
確かに胸ないし、着てる服は男物だけど
至近距離で間違えられたことはないぞ

それにシェリーから情報を聞き出す?
そんなことをした覚えはない
確かに明美さんとは会ってるけど


「ふむ、組織の尾行にも気づいたことといい、有能な人材をここで簡単に殺すのは忍びないな
顔も良い、うまく使えば
君は近接戦が得意だと聞いたが、それは本当かな?」

『シェリーって、誰、だ!
それ、と、答えて、欲し、なら、この手を、離、せ!!』


男に間違えられているならそう思わせてしまえば良い
体を求められたらたまんない
そんなこと絶対にしたくない


「おお、威勢が良いな
うん、それで?
手は離した、君のことを教えてもらおうか?」


え、いや、まさかこんなあっさり離してくれるとは思わなかった


『ふん、人を拉致っておいて随分とお優しいんですね!
近接戦ってなんのこと指すのか知らないけど、柔道なら得意だ
貴方は志保を見張ってる奴らのボスか?
なぜあの2人を見張る必要があるんだ』


あ、キャラがぶれる

って、そうじゃない
ここで弱いところを見せない
死にたくないし、拳銃でも突きつけられれば絶対に体は竦む
そうなる前に聞き出さないと


「私を恐れずに物を言ってくるところも良いね
では次だ
君は親族はいるか?
それと、君の年を教えてもらおうか」


こっちの質問は無視された
名前は聞いてこない?
いや、持ち物からばれてるのか
確か偽装の保険証が入ってた

というか、本当にこの男誰だ
見たことはある気がするのに、さっきから原作の知識が一定以上出てこない


『未成年、僕は親も誰もいない
1人で生活し、学校にも行っていない
僕が突然消えたって、誰も気付かないから、身代金要求とかも無理さ
さあ、僕をどうする?殺すか?』


「ふむ
気に入った。明日解放してあげよう
それから、君はジンの元で基礎を学べ
ああそうだ、シェリーを呼んでいたんだった
彼女と話をすれば良い
君はもうこちらの人間になることが決まったのだから」


は?こちらの人間?組織に入るってこと?


『待てよ!お前は誰なんだ!志保たちとはどういう関係だ!』

「私かい?まだ教えてあげないよ
それと、さっきから言ってる志保とは誰のことかな
そんな名前の人間は組織にはいない
いるのはシェリーという優秀な科学者の卵
それじゃあ、またどこかでね?

あぁシェリー来てたのか、もう入って良い
彼も明日からこちら側の人間となる
だが、お前が犯したこと、許されたとは思うなよ」


その男は外に出て誰かと話をしたかと思うと、靴音を鳴らしながら離れていった
そして入れ替わるように入ってきたのは白衣を着た女の子だった


『!志保、明美さんは無事⁈
彼女はひどい扱い受けてない?』

「貴女ね!お姉ちゃんは無事よ
少しは自分の心配しなさい
貴女が捕らえられている写真を見せられて、どれだけ驚いたか
それに、自分がどんな状況か分かっているの?」


心配してくれて嬉しいけど、床に座っている人が上から見下ろされるのは怖いんです
今君、ものすごく怖い


『まあ二人に監視が付いてた時点で、何かに巻き込まれる可能性は考慮してたから
2人が無事ならいい
それと、僕はそちら側の人間になるらしいね』

だからこれからもよろしく、シェリー


と言ったら盛大にため息をつかれた
え、志保ちゃんってこんなキャラだっけ


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