□顕現
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誰かの声が聞こえる

それに、この暖かさはなんだろ
包まれてる感じ

あたしを呼んでる?


「どうか、私たちに力をお貸しください!」


女の子の声が聞こえた次の瞬間、足が地に着いた感触があり、あたしはどこかの部屋に立っていた
いきなり地に足がついて転びそうになった
自分がどうやって出現したのかは分からないけど、人前であることは確かだったから、かろうじて転ぶのは避けたけど

バレてないといいなぁ


『貴女が私を呼んだ?
私は時の神に調整のために作られた刀剣女士
名をつけてもらえなかった打刀です
ミナトとでも呼んでください
よろしく、審神者様』



うん、口が勝手に動いた
それと同時に、頭の中に大量の知識が流れ込んでくる
刀剣男士、歴史修正主義者、審神者
トキが作り出した世界

……はい?
ちょっと頭がヒートアップしそうなんですけどー

「え、え、女、女士!?
い、石切パパーー!!!」


審神者様、も手違いでもあったのか、慌てて部屋を飛び出していった
目の前に座布団が置いてあったから、それを少し前にずらして畳に直接座る
口が勝手に喋ったとはいえ、彼女のことを様付けして呼んだなら、あちらの方が上
座布団は彼女が座るべきもの
だからと言っていつまでも…なんていうんだっけ、一段高いところ?に立っているわけにもいかないし


ところで、なんで部屋の中なのに桜が舞ってるんだ?
それも畳につくかつかないかでふわって消える
なんか面白くて手に乗せてみたくなって桜の下に手を出すけど、やっぱり消える


『わぁ、不思議
………それで、貴方は誰ですか?』


あ、まだ人が
ちょっと今の行動は恥ずかしかった


「こんな驚きを待ってたぜ
神気も…あぁ、自己紹介をしていなかったな
俺は鶴丸国永という、五条国永によって平安時代に生みだされた太刀だ」


鶴丸国永、餅のように真っ白
よし、覚えた

漢字については脳内で勝手に変換された


『よろしく頼みます
ところで、審神者様はどこへ?
実は…時神に作られてから何も説明を受けずに送られたから、1から説明していただけると嬉しいんですが』


トキって言おうとしたら勝手に時神って言ったよこの口
ほんとどうなってるの
しかも作られて、ってあたしは人間なんだけどな
分かったことは今の自分は刀の付喪神という立場で、腰に下げてる刀を生み出したのがトキだという事のみ


「うーん、主が戻ってきたら説明してくれると思うが
君、本当に何も分からないのか?
俺たち刀剣男士は本霊から離れる時に理解して降りてくる
ここが何年の世で、何と戦わなくてはならないのか
そういうことは教えられずとも理解してくるものなんだがな」


本霊ってなに、というところから始まるのは論外なのか

部屋の外が騒がしくなった
誰かが走ってる?


「つ、鶴丸!
刀剣女士さまはまだいる⁈」


お、おう
さっきの審神者様だ


「主、君が呼び出して顕現させたんだから、そう簡単に消えるわけないだろ
君は本当に見ていて面白いなぁ
それで?石切丸を連れてきたのか」


「うん、やっぱりこういうことは石切丸に見てもらうのが1番かと思って
太郎太刀はまだいないし、青江は、あれだから、ね…」


石切丸、太郎たち、あおえ?
今度は変換されなかった
ということは、その本人、本刃?を見ないといけないのか


ここは一体何人住んでるんだ


「良かったぁ
いきなり飛び出してごめんなさい
えっと、まずは自己紹介だよね
私は翠玉の名を与えられた審神者です
まだまだ未熟者ですが、これからともに戦う仲間としてよろしくお願いしますね、ミナト」


審神者
この人は普通の人間、なのかな

名前を呼ばれた瞬間、体の奥が熱くなった
呼ばれたことが嬉しいかのように
まあ名無しよりはマシだよね


『よろしくお願いします
あの、先ほど鶴丸さまにも言ったのですけど、時神に作られてから何も説明を受けずに送られたから、ほとんど何もわからない状態なんです』


「うん、なら私が教え「主、君は肝心なことを忘れてないかい?」」


おお、今度はずいぶん大きい人が来た
あれだ、神社の神主みたいな服装
萌黄?若草?えっとなんて言う色だっけ
とにかく緑が綺麗な和服だ


「肝心なこと…あ!石切丸の紹介!」


それ、あたしにとっては必要だけど、彼が言ってるのってそういうことなのか?


「あのね、政府には連絡したかい?
この刀は間違いなく元から女士の付喪神だ
となると、君が新しく呼び出したことになるのではないかな」


「あー!そうだった
じゃあ石切丸、鶴丸、2人で説明してあげて
それと、本丸の案内も
部屋は私の隣ね、女の子なんだから!」


まるで風のような人だな
あ、あたしも似たようなものか
学校では結構慌ただしく動き回ってたし、外から見たらあんな感じなのかな








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