短い旅(短編)

□ただいま、おかえり
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いい具合の晴れの日

バンエルティア号の甲板で、アドリビトムのメンバー、ゼロス・ワイルダーは考え事をしていた

世界の危機からもう1ヵ月が経ち、各々やるべき事が落ち着いて、徐々にまた集まってきた

ゼロスも特にやることがなく自然とここに来てしまった

ここにいる(ゼロス曰く)愛しのハニー達とお喋りをして、依頼をこなし、1日が過ぎていく

いつも通り

いつも通りのはず・・・だが

最近、いつも通りの日常に疑問を持つようになった

ゼロス「1日って、こんなに長かったっけかぁ・・・?」

今はここに誰もいないので独り言をこぼす

ある少女がいたときも毎日同じことをしていた

だが、ネガティブ・ネストを討ったあの日から

全てが終わったあの日から

少女が消えたあの日から

何をするにも物足りなく感じるようになった

ゼロス「・・・なぁ名無しさん、どこほっつき歩いてるんだ

お前がいないせいで、世界が平和になっても、ここの奴らは浮かない顔してる

ディセンダーなんだから、この船にいる奴らくらい笑顔にできるだろ・・・?」

独り言というよりは、話しかけるように呟く

風が、その呟きに応えるように吹いた










「あたりまえじゃないですか」

ゼロス「っ・・・!?」

久しく、1ヶ月ぶりに聞く落ち着いた声

勢いよく後ろを振り返る

「・・・それが、ディセンダーの役目ですから」

薄く、ほんの少し微笑みながらそう言うのは

名無しさんだった

ゼロス「名無しさん・・・!

い、いつ帰ってきたんだ!?」

「昨日の夜です

チャットさんに報告をした後、疲れて医務室で寝てしまいました」

ゼロス「き、昨日・・・」

いきなりのことすぎて頭でついて行くのがやっとだ

そんな事はお構い無しに名無しさんは話を進める

「ゼロスさん以外の方には既にこの事は報告済みです

・・・ただいま、です」

少し気まずそうな、恥ずかしそうな様子で言う

その姿を見たら自然と笑みがこぼれた

ゼロス「全くこの俺様を置いといて他の奴らが先なんてヒドイ奴だぜ〜

まあとりあえず・・・おかえり」

今までこんなに心から「おかえり」などと言うのは初めてだった

こんなに誰かが帰ってくることが嬉しいことなんて初めてだった

ゼロス「しっかし名無しさんがいなくてすげー寂しかったぜ〜?」

「それはいつものたらしですか?」

ゼロス「ちょ、俺様そんな風に思われてたの!?

ショックだぜ〜・・・」

「フフッ、冗談ですよ」

ゼロスは楽しそうに笑う名無しさんを見て思うのだった

ゼロス「(ようやくいつも通りの日常が戻ったな)」





ゼロス(じゃあ名無しさん〜

早速これから俺様と2人っきりでデートに・・・)

(お断りします

・・・と言いたいところですが、今回だけですよ)

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