長い旅(テイルズ)

□バンエルティア号の秘密と新メンバー
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〜ホール〜

次の日、ジェイドに話があるとチャットと名無しさんは今日ホールに呼び出された

偶然会ったキールとルカにも聞いてもらうことにしたらしい

「どうかしたんですか?」

ジェイド「決めました

とりあえず私達は、ここでこのままかくまってもらう事にしましょう

テロの標的はもう御免ですし、何よりこの船に関心が湧きましたから」

どんどんと話を進めていくジェイドを止めるチャット

チャット「勝手に決めないで下さい

船長はボクですよ?

あなたの処遇はボクが決めます」

ジェイド「おや、いいんですか?

所属や国籍不明の船舶は立派な航行法違反になりますね

軍規に則り、制圧という展開も考えられますが・・・」

普段は冗談を言う彼も、今回は本気だと言わんばかりの圧があった

「制圧・・・!」

不穏な単語に手を武器にかける

チャット「か、海賊はそんな脅しに屈しません!」

ジェイド「そこのお坊っちゃんや学生さん、名無しさんも海賊だったんですか?

だったら容赦しませんが・・・」

ここまま海賊という認識になってしまえば、ジェイド達は敵になってしまう

ルカ「・・・えぇぇ」

キール「ぼ、ぼくは関係ないからな!」

「・・・・・・」

勝手に海賊扱いされた三人は、それぞれ反対の意を示す

ジェイド「まあまあ、無所属なのですから、我が国所属になればいいんですよ」

チャット「バカな!

軍船にされるなんてお断りです!」

チャットは譲る気は無いのか力強く断る

ジェイド「ならば・・・ギルドとしてならどうです?

現状ではまともに依頼など来ないでしょう

我が国の正式な認可があるとすれば、状況がまるで違うと思いますが?」

キール「・・・それは悪くないな」

ルカ「悪くないどころか、これって好都合なんじゃない?」

「チャットさん、私も大丈夫だと思いますよ

根拠とかは無いんですが・・・」

チャット以外の三人はこの条件を受け入れていいと思っているようだ

チャット「・・・いいでしょう

ただし、あなたがたもボクの子分として船に乗ってもらいます

雑用や、ギルドの仕事を請け負ってもらう事になりますがとーぜん構いませんね?」

ジェイド「ええ、もちろんですとも

さてと、それにはまずギルドの名前を決めないといけませんね」

「はぁ・・・」

重要な話をした後に名前とくると少し軽い話に思えた

ジェイド「ふむ、『アドリビトム』というのはどうでしょう?」

キール「『アドリビトム』・・・か

古代神官語で『自由』という意味だ」

「自由・・・!いいと思います!」

ルカ「僕達に、ピッタリかもしれないね」

これには満場一致で満足なようだ

チャット「結構ですね!

さあ、これから忙しくなりますよ

たくさん依頼が来るのを待ちましょう!」





話にキリがついたので、それぞれやる事をしにいったり部屋に戻る

「・・・意外でした」

ジェイド「何がです?」

ホールにまだ残っている名無しさんとジェイド

ジェイドは突然言われて軽く首を傾げる

「船のことも、名前のこともです

『アドリビトム』、自由・・・とても、いい名前だと思います」

真っ直ぐとジェイドのことを見ながらふわりと笑う

ジェイド「!・・・そこまで喜んでもらえるとは、夜遅くまで考えた甲斐があります」

「え!?

では最初から制圧とかは・・・」

ジェイド「考えていませんよ」

さらっと平然とした顔で言う

「そ、そうだったんですか・・・

仲間と戦うなんて嫌でしたから・・・」

ジェイド「そうでしたか・・・それは悪いことをしてしまいましたね」

彼にしては珍しく悪かったと思っているようだった

「いえ、嘘だとわかって安心しました」

それでは、と名無しさんはホールを出ていった

ジェイド「・・・私を仲間と言ってくれるんですね」





数時間してホールにて

まだホールにいたジェイドは、ふと疑問に思ったことを呟く

ジェイド「はて?この船はバンエルティア号と言いましたよね?

なのに、近海までしか移動できないとは、随分聞き劣りするお話ですが・・・」

ここにいたチャット、キールが反応する

チャット「!

あなたは、この船の何を知ってるっていうんですか!」

ジェイド「この船が伝説の通りだというのなら遠洋どころか内陸まで移動可能なはずです」

普通の船では不可能なこともできるらしい

キール「なんだって!

バカな!ただの船にそんな事が出来るわけがない」

ジェイド「頭の固い方ですね

とても、学生とは思えません・・・」

呆れながらわざとらしくこめかみを押さえた

バンエルティア号には遠い所に行ける他に陸も移動できることがわかったが、今じゃ対応できないと後回しにされた





〜ホール〜

次の日、何気なくホールにいたジェイドはパニールに呼び止められた

パニール「あのー、ジェイドさん

お客さんがお見えになってますけれど」

ジェイド「私にですか?」

甲板で待たせていると聞いてそこへ向かった

偶然ホールを通りかかった名無しさんはその一部始終を見ていた

どんな客なのだろうと気になりどうしようと迷っていた

パニール「名無しさんさんも、行きましょうよ」

「えっ・・・ですが・・・」

パニール「ジェイドさんなら、あなたのことを邪魔なんて思わないと思いますよ」

パニールの後押しもあって名無しさんも甲板に向かった





〜甲板〜

アニス「じゃ、本国へは戻られないんですかぁ?」

甲板に出た途端、可愛らしい女の子の声が聞こえた

ジェイド「はい

敬愛する皇帝陛下へは、懇切丁寧に文書で説明しましたから、大丈夫ですよ」

そこには黒い髪を二つに結び、背中にぬいぐるみを背負っている少女がいた

こちらに気付いた少女がジェイドに問いかける

アニス「んっ?あの人誰ですかぁ〜?」

ジェイド「・・・?

おや、名無しさんでしたか」

少女に言われるまで気付かなかったのか一瞬驚いた顔をしていたが、すぐにいつもの顔に戻った

「あ、すみません、勝手に聞いてしまい・・・」

ジェイド「いえいえ、聞かれて困る内容でもありませんし」

アニス「んもぉ〜、大佐☆

私をお側に置いてもらわないと困っちゃいますぅ

なんたって、アニスちゃんは大佐の部下なんですから!」

柔らかそうな両頬に人差し指を当てながら言った

ジェイド「あなたには本国で情報を集めるという仕事があるでしょう」

アニス「その情報を持って来たんですから!

お仕事忘れてませんよ、偉いでしょ♪

実はですねぇ、ナパージュという村でマナではない代替エネルギーが普及し始めているみたいなんです

確か、『ラルヴァ』とかいうエネルギーらしいですよ」

ジェイド「それは興味深いですね

ぜひとも詳細を知りたいものです」

二人のやりとりを眺めていた名無しさんの後ろの扉から、チャットが出てきた

チャット「この方は、どなたです?」

ジェイド「これは私の部下でして

アニス、この船の皆さんに自己紹介を」

促された少女は名無しさんとチャットに向き直り、自己紹介をする

アニス「アニス・タトリン

ピッチピチの13歳です♥よろしく

私もここで大佐のお手伝いをしますぅ

いいでしょ?いいですよね〜♪」

アニスは明らかに作っている口調で言った

「ということは、メンバーに入るということですかね」

チャット「その代わり、ここで働いてもらいますよ

アニスさんがそれで構わなければ」

アニス「はうわぁっ!ここギルドでしょ?

結構ハードな仕事とかはちょっと遠慮したいかな〜、なんて・・・」

遠慮がちに言うアニス

それを聞いたジェイドはため息をつきながら言った

ジェイド「どうやら私は部下を甘やかせ過ぎたようですね

もちろん、アニスの為にとびっきりハードな任務を用意してもいいんですよ」

冗談なんだかわからない黒い笑みでアニスに言う

「部下を甘やかす人ではないでしょう・・・」

アニス「な、何を言ってるんですかぁ、大佐

ギルドの仕事も頑張っちゃいますよ!」

ジェイドの黒い笑みに冷や汗をかきながら意気込むアニス

ジェイド「そうですか

では、暴走しない程度に頑張ってください」

その後チャットはアニスがギルドに正式に入ることを認めた後船内に戻った

「あ、私は名無しさんといいます

よろしくお願いします、アニスさん」

アニス「うん!よろしくね!☆」

ジェイド「ではアニス、私はやる事がありますので先に入っていますよ

名無しさんも、今日は冷えますからね

あまり長話しないように」

そう言い残し、ジェイドも船内に戻っていった

アニス「は〜い!♥

・・・あの大佐が他人の心配〜!?

あんた、大佐に気に入られてんの!?」

「・・・はっ?え、は、えぇ!?」

アニスの突然の変異と言葉にすごく驚いた名無しさん

その言葉の内容にも驚きが隠せないでいた

アニス「大佐に気に入られるなんて、名無しさんって何者!?

すごすぎるんですけど!」

質問攻めにするアニスは先程の自己紹介の時とは考えられない豹変っぷりだ

(これがアニスさんの素ということか・・・?)

「べ、別に気に入られているなんてことはないですよ

そもそも会って数日しか経っていませんし・・・私にそんな価値はありません」

最後の一言でアニスは一瞬哀れんだがすぐに元に戻った

アニス「それじゃあ、大佐のこと狙ってないってこと?

よかった〜!玉の輿候補とられるところだったよ〜!

んじゃ、早く中入ろっ!」

(玉の輿・・・?お金持ちになりたいのか?)

アニスは名無しさんの腕を引っ張って中に入っていった

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