長い旅(テイルズ)

□バンエルティア号の日常
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それからカノンノとチャットに、ここでの基本的なことを教わった

その2人以外のメンバー

パニール、ルビア、カイウス、ルカ、イリア、リッド、ファラ、キールにも挨拶をした

依頼の受け方もわかったので、少しの間依頼をこなしていた

何かしていないと自分のことを考えてしまうからだ

『記憶喪失』

夜はその事を考えてしまい眠れない日もあった

だが最近はメンバーとも打ち解けてそんな不安も薄れていき、だんだんとここの生活にも慣れてきていた





〜ホール〜

カノンノ「名無しさんって、仕事覚えるの早いねぇ

すごいなぁ」

羨ましそうな顔で名無しさんに言うカノンノ

パニール「ひょっとしたら、元々はこういう仕事をされていたのかもしれませんねェ

はい、ココアどうぞ〜」

小さい体でココアを入れてくれたパニールに少し頭を下げる

「ありがとうございます」

ココアを一口飲むと、甘い味が広がった

美味しい、と思った

記憶喪失だからかわからないが、この世界のほとんどの食べ物の味を知らなかったのだ

カノンノ「それとも、名無しさんは生まれたばかりのディセンダーだったりして」

「・・・ディセンダー、ですか?」

前にも聞いたことがある単語が出てきたので、今回は掘り下げてみる

キール「また始まった、あれはおとぎ話だろ?

まったく・・・

そんな非現実的な話で夢中になれるなんて暇を持て余している証拠だな」

相変わらず皮肉を言う

パニール「いーじゃありませんかァ

夢を見るのは乙女の特権ですよ

私にはキールさんも暇そうに見えますけどねェ?

はい、こちらにもココア」

キール「暇なもんか!

論文の事を考えると、頭が痛くて・・・

・・・フン、まあ、息抜きがてらに少し付き合ってみるか」

名無しさんの疑問に珍しくキールが答える

キール「ディセンダーというのは、世界の平和が乱れる時、世界樹が生み出す勇者の事だ

生まれたばかりのディセンダーは世界の事から自分の事、何もかも知らない状態らしい

つまり現象的には記憶喪失と大して変わりはないな」

「記憶喪失と同じ、ですか・・・

ディセンダーも大変なんですね」

カノンノ「何もかも知らない・・・

不可能も恐れも知らないって事でしょ!」

何もかも知らないということをポジティブに考えるカノンノを見て、少し救われた気がした

パニール「本当にカノンノはこのお話が大好きなのねェ〜」

その後ディセンダーの事から世界の事、様々なことを教えてもらった






〜機関室〜

イリア「うが〜ッ、ヒマッ!

暇にも程があるってのよっ」

イライラした様子で大声を出すイリア

リッド「だよな

せっかくギルドを立ち上げたってのに大した依頼はやって来ないし」

チャット「せっかくこのバンエルティア号も受け継いだというのに

このままではご先祖の勇名が泣いてしまいかねません

さっさと名を上げなければ・・・」

「このギルドって、知名度低かったんですね」

チャット「うぐっ・・・」

痛いところを突かれたらしい

名無しさんは少し申し訳ないと思ったが、結局のところ本当なのでこれ以上深く追求しないようにした

キール「フン、本気で言ってるのか?

大体こんな子どもばかりのギルドに、まともに依頼が来るわけないじゃないか」

キールの言う通り、ここの平均年齢も低い

チャット「皆さんが子どもなのは、皆さんの責任じゃありませんか!

まったく、子分が子どもだとキャプテンも苦労しますね」

キール「お前が一番子どもじゃないか!」

「あなたもですよね・・・」

結局、ギルドメンバー全員子どもなのであった





〜甲板〜

機関室での会話がヒートアップしてきたので、静かであろう甲板に移動する名無しさん

だが一番乗りではなかった

カノンノ「あ、名無しさんだったんだ

本に夢中になってたから気付かなかったよ」

カノンノは本を読んでいたようだ

「お邪魔してすいません

・・・その本、どんな内容なんですか?」

カノンノ「これ?ディセンダーの絵本だよ

どんなお話か、知りたい?」

「是非」

言葉の数は少ないが、どことなくワクワクしているような様子の名無しさん

カノンノ「じゃあ、読んであげるね、えーっと・・・」

内容はキールが話してくれたディセンダーの話とその続きだった

世界を救ったディセンダーは、世界樹にまた帰ってしまうらしい

「ディセンダーは、自分の救った世界で暮らせなかったんですね・・・」

カノンノ「うん・・・私、この話大好きなの

小さい頃からこの本を手放した事はなかったくらい・・・」

カノンノは本当に手放したことはないのだろうとわかるくらい、大切そうに本を抱いた

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