夢への扉

□僕はまだ子供だけど
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ヒビヤside

あの忘れもしない夏の日から
もう5年たった。僕は16になり、
シン兄やおば…ごほん、モモと
同じ高校に日和と一緒に通っている。

あの日に比べて僕の生活は劇的に
変わった。なにが変わったって、
1番はシン兄と恋人という間柄に
なったこと。しかも同棲という
ところまでにこぎつけている。

シン兄は社会人となり
普通にサラリーマンをしている。
営業成績はもちろんトップ。
収入もいいんで生活は安泰。
それなりにいい暮らしができている。

基本、家事は僕がやる。所謂、
主夫ってヤツ?

シン兄はもちろん帰る時間はバラバラ
遅いときもあれば、早い時もある。
シン兄は毎日帰りの時間を報告
してくれる。今日は確かに
早く帰ると言っていた。それなのに…

現在、11:50分。
もうすぐで12時をまわる。
そんな遅くなのに、まだ帰ってこない
なにをやってるんだ。
そう、軽く悪態をついていると、

「たらいま〜」

ベロンベロンに酔っ払った
シン兄が帰ってきた。

「ちょっと、シン兄飲んできたの?」

「ふへ?うん。ちょっとだけ」

酒弱い癖になにやってんだこの人。

「もう、ほらそんな所に
寝てないで、靴脱いであがってきて」

「はぁ〜い。」

子供か。口調が幼くなっている。
ホントにこの人は20代なのか。

「飲んでくるなら連絡してよ。」
こっちは心配したんだから。

「らって………
う〜ごめんなしゃい。」

全然呂律が回っていない。
言い訳をしようとしたらしいが
あきらめたようだった。

「ご飯食べたの?」

「ん〜と、食べてない」

大方、酔っ払ったせいで、
食べる余裕なんてなかったのだろう。

「シン兄、ご飯にする?
それともお風呂、先に入る?」

「じゃあね…ヒビヤにする‼」

「うえぇ!?」

そんな天然たらし発言するから
一気に顔が真っ赤になる。
しかし、当の本人はキャッキャッと
笑っている。

「そんなの選択肢になかったでしょ」

スコンっと酔っぱらいの頭に
チョップをかました。

「いたっ…むぅ…べつにいいじゃん
おれ、ヒビヤがいい。」

「もう、ふざけてないでさっさと
お風呂に入るか、ご飯食べるか
どっちかにして。」

「やらぁ〜ひびやぁ〜!」

なんて駄々こねて僕の腰に
抱きついてくるものだから、
そろそろ、僕も限界で。

「だからいい加減にして!
だめったらだめなの!」

今すぐにでも押し倒したい衝動を
押さえつけ、最後の抵抗をする。
そしたら今度は目を潤ませ上目遣いで

「ほんとぉにらめ?」

なんていうから。

プチッ。僕の中のなにかが
切れた音がした。

僕は無言でシン兄を担ぎ上げ
そのまま自分の部屋に直行した。
部屋で何をするかなんて
言わずもがなでしょ?

(僕はまだ子供だけど
大人のスルことならできるよ?)

end

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