二重奏は青空に響く(marco)
□二重奏は青空に響く,2
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ゆっくりと意識が浮上していく。
目を開けて最初に見えたものは
『、、、手?』
そっと腕を挙げ額に乗っている大きな手をどかすと、視界の端にベッドでうつ伏せになって寝ている男の人が写った。
……誰だろう?
余程熟睡してるのか、ピクリとも動かない。
起こすのも気が引けたので、顔だけを動かして周りを見回す。
白いカーテン、木目の天井、丸窓から差す光は床と天井にやわやわと綺麗な波模様を描いている。
そして、自分が居るのは白いパリッとした清潔感が漂うベッドの上。
私、どうしたんだっけ……?
すると、突然頭のなかに記憶が濁流のように押し寄せてきた。
燃え盛る村、あがる悲鳴、冷たい檻に枷、自分にムチ打つ濁った目、響く銃声、
そして……
海兵の中に飲み込まれていく…
『ーーーっ』
母さま…
『ふっ……くぅ……』
母さまに会いたい……
堪えきれず、涙が溢れる。
泣いてはいけない。殺される。
わかっているのに、涙を止めることが出来なかった。
そのまま、声を押し殺し泣いてどのくらい経っただろう。
マ「ん……」
うつ伏せで寝ていた男の人がもぞりと動いた。
はっとして、涙をぬぐう。
男の人はゆっくりと気だるそうに体をおこした。
恐怖に無意識に体が震える。
その人は軽く伸びをすると、うっすらと目を開けてこっちを見た。
お互いの目が合って数秒……
マ「お、なんだ目が覚めたのかよい」
優しく話しかけてきた。
『ーーっあ、あの、すいません!!』
私は慌てて姿勢をただし、頭を下げようとした。
しかし、
『うっ……』
体を動かした瞬間、全身が砕けるような痛みに襲われ、たまらず顔をしかめた。
マ「お、おい!急に動くんじゃねえよい!!」
男の人が慌てて、私をベッドに押し戻す。
『す、すいません。迷惑を……』
マ「その、すいませんはやめろ。こんなの別に迷惑でも何でもねぇよい。」
その人が頭をがしがしかいて言った。
マ「まだ、怪我が直ってねえんだ。大人しくしとけよい。」
『すいま……あ、』
マ「ぷっ……ハハハ」
その人は急に笑った。
その笑顔に恐怖がすぅっと消えていく。
マ「まあ、すぐには無理だな。俺はマルコだ。」
よろしくな。とマルコさんが頭を撫でる。
『あ、サナです。助けていただいてありがとうございます。』
私ベッドの中ではおずおずと頭を下げた。