色は匂えど(シャチ)
□第五章. 忍ぶれど
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『おはようございます。』
朝、船の食堂へ行くとロー以外のクルーはもう全員起きていた。
ベ「おはようっセリン!」
シャ「もう調子はいいのか?」
『うん、もうすっかり良いよ。昨日はごめんね。』
ペ「体調が戻ったんなら良かった。あまり無理はするなよ…」
『はい。』
シャ「じゃあ、サッサと飯食って仕事しようぜ。今日はオレ達洗濯当番だってよ。」
『分かった!ちょっと待ってて』
セリンは皿に料理をつぎ、食べ始めた。その時…
ベ「あっ、キャプテンおはよう!」
シャ「はざーっす」
ロー「ああ。」
ローが食堂に入ってきた。
『船長、おはようございます。』
セリンも挨拶をする。すると、ローは一言
ロー「お前、後で船長室に来い。」
『えっですが、私この後洗濯が…。』
ロー「ベポ、代わってやれ。」
ベ「アイアイっ」
シャ(えー…。)
せっかくセリンと一緒に居れる貴重な時間を船長に取られ、内心かなりショックなシャチ。
しかし、そんなシャチに気付かずセリンは『分かりました。では朝食後に向かいます。』と言って朝ご飯をかき込んだ。
***
『失礼します。』
船長室へ入ったセリンをソファに座ったローの冷たい視線が迎えた。
セリンは黙ってドアの前に立っている。
ロー「座れ。」
ローはテーブルを挟んだむかいのソファへ座るよう促し、セリンが座ったのを確認すると単刀直入に聞いた。
ロー「昨日の夜、甲板で何してた。」
聞いた途端、セリンがビクリと肩を震わせる。
(み、見られていた!?よりによって船長に!)
心臓がバクバクと音を立てる。
『べっ別に、月光浴をしていただけですが。』
ローの目を直接見れない…。ローが顔をしかめるのが視界の端で確認できた。
(だめだ、100%信じてない。)
なぜ、もう少し周りを注意しなかったのだろう…
自分の少しの油断に後悔した。
ローが再度口を開く。
(何とかしてごまかさないとっ)
と、その時
ドォォォォォン
ロー「何だ!?」
空気を震わす爆音の後、船が激しく揺れる。
シャ「船長!!大変ですっ、海軍に見つかった。」
シャチが飛び込んできた。
ロー「ちっ、戦闘だ。反撃しろっ」
ローは愛刀を手に部屋を出て行った。
ロー「セリン、話は終わってからだ。」
(はあ、)
何とか助かった…
(戦いの間に言い訳を考えておかないと…)
セリンも刀を手に船長室を後にした。