愛されGirl

□20.デートA
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平日の水族館はあまり人がおらず、有名な場所であるものの閑散としていた。

しかしそれは凛と壮五にとっては好都合で、薄暗い水族館の中をぴったりと寄り添って歩いていた。

水槽のトンネルの中を歩く二人の顔に水の青が反射する。



「壮五君見て、サメだよ」

「本当だ、大きいな…」

「あんな小さい魚と一緒にいて大丈夫なのかな」

「ちゃんとエサをあげていれば他の魚を食べないとか?」

「あ、確かに」


人が多い時は途中で立ち止まったりすれば迷惑になりそうだが、人がまばらな為、二人はトンネルの中に佇んで自由に泳ぐ魚たちを見上げた。

凛は水槽に触れると小さく微笑む。手から水槽の冷たさが伝わってくる。


「私、初めてだな。こうやって、男の子とデートするのって」

「…そうなんだ?」

「うん。小学校卒業したらすぐにアメリカに行ったし、青春時代は全て仕事に費やしたって感じだったし」

「そっか…」


水槽を見上げる凛の横顔を見ながら、壮五は意外だ、と思っていた。

"DIARY"での凛はその歳にしてはとても大人びて見えたし、この容姿なら引く手数多だったのではないか。そう思っていたからだ。

凛は壮五の顔をチラッと見て、その思いを読み取ったのか苦笑する。


「意外だ、とか思ってるんでしょう」

「えっ」

「分かるよ、壮五君の顔がそう言ってた」

「ご、ごめん」

「ふふっ、いいよ別に」


凛はまた水槽を見上げた。


「でも…、言い寄られたりしなかった?」

「まぁ…降板した後は、そういう事はあったけど。でも私がうぶ過ぎてみんなすぐ去っていったよ」

「そ、そうなんだ」


壮五が反応に困って少し笑うと、凛が壮五を見上げる。その表情はとても嬉しそうだ。


「……私の事、ちゃんと見てくれたの、壮五君が初めてだよ」

「…っ、そっか」

「うん」


嬉しそうに自分を見上げる彼女を、壮五は抱き寄せたくてたまらなくなる。

繋いでいない方の手が凛の方へ伸びかけた時、ピンポーンと館内放送が流れ、壮五は手を引っ込めた。


『この後ショースペースにおいて、イルカショーを行います。皆さま是非お越しくださいませ』


放送が終わると、壮五と凛は顔を見合わせる。


「イルカショーだって。凛さん、行く?」

「うん、行きたい!」

「じゃあ、行こうか」


壮五は凛の手を引いてイルカショーへと向かった。




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