愛されGirl

□16.誘い
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ある日の夕方、凛は一人事務所で仕事をしていた。


外は雨が降っていて少し肌寒い。





ふとキーボードを叩く手を止めて外の雨の様子を眺めていると事務室の扉が開き、少し雨に濡れた一織が入って来た。


高校帰りの一織は制服のままだ。





「一織君、お帰りなさい」

「はい、お疲れ様です」





一織はパッパッとブレザーにかかった雨水を払うと凛を見つめる。



凛が(…こ、この目は…)と身構えた時には一織は口を開いていた。






「凛さん、逢坂さんと付き合ってますね」

「へっ!?」





凛はデスクチェアからずり落ちてしまいそうなくらい驚いて顔を青ざめさせる。





「い、いきなり何で!?」

「四葉さんが言っていましたよ、『そーちゃん、最近レストラン探してばっかり、ぜってぇ女だ』と」

「それがどうして私と関係あると…」

「あなたしかいないでしょう、逢坂さんは暇さえあればあなたを見ていますよ」

「えっ…」




凛が思わず赤面して嬉しそうな表情をすると、一織はため息をつく。




「あなたはバカですか」

「え」

「鎌をかけたんですよ」

「かま……」

「英語で言うとto tri...」

「分かります!分かるけど…」




凛は思わず立ち上がる。




「付き合っているんですよね」

「………………」

「怒らないので言って下さい。確かに私は以前あなたに『メンバーにばれない様にしろ』と言いましたよ」





一織はソファの背面に立ったまま体を預けて凛と向かい合う。





「でも一人は理解者がいた方が良い。でないとこれからあなたはきっと上手く立ち回っていけない」

「一織君……」




凛は一織の言葉に目を見開かせる。




一織にこんな事を言われるとは思っていなかったのだ。





「……うん、付き合ってるよ」

「…そうですか」

「ごめんね、一織君…」

「どうして謝るんですか。私は別に反対している訳ではないんですよ」




一織は腕を組んで冷静な表情をする。




「悪いことばかりではないんですよ。例えば、恋愛をしているからか、最近ファンの間で逢坂さんの色気が増したと盛り上がってさえいますし」

「うん、そういう書き込みは私もよく目にしてるよ」

「あなたが気を付けなければいけないのは、関係をパパラッチに抜かれない様に慎重に行動する事です」



凛は思わず俯く。


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