Season3 【完結】

□冬の章三 洞房の侘助(どうぼうのわびすけ)
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北の校舎にある美術室は、陽が沈むと、しんしんと寒く、鉛筆を握る文川薔乃の指も悴んだ。
教室まで迎えに来た中田真昼と共に過ごす時間は、いつも放課後の美術室で、暖房器具を使わないことを条件に、使うことを許されていた。
最初は頻繁に覗きに来ていた教師も、問題がないと分かると、生徒達に一任したきり、顔を出さなくなってしまった。

「田崎先輩と喧嘩でもしたんですか?」

教室での微妙な空気を感じ取った真昼が、薔乃に訊ねた。
薔乃は、璃青と距離を置いていた。

「…別に…。私が勝手に拗ねてるだけ」

真昼がフフと、鼻に抜ける笑い声をたてた。

「薔乃先輩、子供みたい」
「子供だもん」
「あ、本当に拗ねてる。また、解決しないことをぐるぐる考え込んでるでしょ? 薔乃先輩の悪い癖」

後輩に言い当てられた薔乃は、唇を小さくへの字に曲げた。

「…真昼はさ、どうして私といるの? 私に気がないこと、分かってるのに」
「薔乃先輩、迷惑そうにしてないから」

デッサンの邪魔にならないよう、少し離れた位置に腰掛けていた真昼が、薔乃の側へと摺り寄った。

「私は自分で納得してやってるから、薔乃先輩の、都合のいい玩具でいいの。だって、薔乃先輩、人がいいんだもん。無視とか、酷いこととかしないし」
「…今、言ったよ? 気がないって…。結構、酷いこと言ったと思うんだけど…」
「それは、最初から分かってたことだし」
「……」

無視なんて、できる訳がなかった。
恋心と分かっていても、受け入れることができない真昼は、そのまま、璃青に恋する薔乃自身を投影していた。

「ちゃんと懐まで、入れてくれるし…大好き」

真昼の顔が近づき、薔乃の顔と重なる。

「…あわよくば……って、思っちゃうよ」

唇を重ねられた薔乃は、半ば、儀式的に真昼の唇を啄んだ。

「…ちゃんとね、薔乃先輩の言い付けも、守ってるんだよ」
「…本当に着けて来たんだ?」
「はい」
「…どんな感じ?」
「トイレがちょっと面倒臭いかな? あと、立ったり座ったりすると、擦れて…やばい」

真昼は、薔乃の手を取り、スカートの中へと導いた。

「…分かります?」
「…う…ん」

薔乃が、下着の上からでも分かる膨らみに触れると、真昼から小さく甘い声が漏れた。

「見る?」

上気した頬で、真昼が訊いた。

「…見て欲しいの?」
「うん」

真昼が、薔乃に添えていた手を、強く引き寄せた。

「脱がせて」

と、熱っぽい瞳で言うと、自らの下着の縁に手を掛けさせた。
腰を浮かすと、下着はいとも簡単に太股まで下がり、片足だけ抜くと、真昼は両膝を立て、軽くハの字に開いた。
下着の下には、真昼が家から着けてきたという、特殊な器具が装着されていた。
腰のベルトは臍の辺りから、下腹部を通り、叢へとTの字を描いて伸びている。蔭核から先は紐のように細くなっていて、両側の肉に挟み込まれる形で、真昼の女性器を隠していた。

「…これ、真昼が自分で選んだの?」
「そうですよ。何か着けてきてって言われたから。これなら一見Tバックっぽいし」
「…あのね…真昼…」
「先輩の言いたいことは、分かってます。私に諦めさせるための無茶ぶりだって。でも、私…これ着ける時、ドキドキした」
「…真昼…」
「ね、ここ、さっき薔乃先輩が、触ったとこ」

真昼が、膨らみを指して言った。

「…私は、痴漢に触られた時、ふざけんなって思ったけど、真昼どう…」
「変なこと訊くんですね? 薔乃先輩は痴漢じゃないもん、気持ちいいよ。さっきも言ったけど、着ける時、ドキドキした。薔乃先輩の言い付けを、素直に守っちゃってる自分とか、先輩がこれ見た時、どんな反応するのかとか、触られたらって想像したら、興奮した」
「そっか…」
「好きって感情があるだけで、全然、違いますよね」
「…う…ん」

薔乃はゆっくりと俯いた。
好きって感情があるだけで―。
それは、確かにそうだろう。璃青に言い付けられたら、璃青に触られたら…、そう思うだけで、薔乃の首や耳たぶの辺りは熱くなる。

「薔乃先輩?」
「…えっ?」
「今、田崎先輩のこと、考えてました?」
「璃青? ううん、何で?」

薔乃は咄嗟に嘘をついた。真昼は何も答えず、微笑みを返した。

「これ、脱いでいい?」
「…うん」

真昼は薔乃の許しを得ると、装着具を脱いだ。
一見すると、貞操帯のような器具は、施錠装置こそなかったが、内側の蔭核に当たる部分に、シリコン製の突起が付いている、放置可能な責め具だった。
装着具を外した真昼は、再び膝をたて、ハは字に脚を開き、薔乃の前に性器を露にした。
薔乃にとって、初めて目にする女性器だったが、正直美しいとは思えなかった。

「薔乃先輩、ここね、男性器と一緒なんだって」

真昼が、下着の上から触らせた膨らみを指した。
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