恋と鬼退治
□動揺
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住宅街が作り出した迷路のような小路を抜け、バス通りへ出た。
通りの両端にある長い歩道には桜の木が均等に植えられ、街がピンクで染められている。
「七々子」
バス停へ向かうと、いつもの声でそう呼んで意味有りげににやにやと笑う彼女がいた。
美浜百化(みはまももか)。
規定の長さの半分も無いスカートから白くて長い足がのび、タイを付けてないセーラー服はしわ一つない。そして手入れの行き届いたサラサラの金髪。
その金髪と桜吹雪が朝の光でキラキラと幻想的に光った。
「おはよう百化」
また何かたくらんでるな、と、七々子は確信した。どうやら彼女は手の中に何かを隠し持っているようだ。
「ほら」
「すごい…綺麗…!」
百化が手を大事そうにゆっくりと開けると、綺麗な緑色をしたアマガエルがいた。
「まさか今日会えるなんて夢にも思ってなかったよね〜」
でへへ〜と顔を綻ばせる百化を見て、七々子もじわじわと口角が上がる。
実は昨日、二人で見ていたゴールデン番組にアマガエルが出てきて、こんなに綺麗な色のアマガエルを見たことがあるかないかという話をしていたのだ。
ふにふにと背中辺りをつついてみると、ぴょんっと飛び跳ね百化の手から離れた。
「あっ」
カエルはそのままぴょんっぴょんと跳ねてどこかへ行ってしまった。
「私らもバス停に行くか」
七々子が去ったカエルを名残惜しそうに見ていると、“行くぞー”と百化が手を引いた。