雨深夢 *゚

□おかえり *゚
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『...ただいま。』

薄暗い玄関に私の声がこだまする。
まぁ、一人暮らしだから誰も返事なんてしないんだけど。

今日のご飯は何にしよう。
考えながらリビングのドアを開けた。

『...へ?』

「あ。海紗、おかえり。」

其処に居たのは、テーブルにご飯を乗せている浅野の姿だった。

『ただいま...じゃなくて...
なんで浅野がいるの?』

「...僕の家も、今日は親がいないんだ。
少し寂しくなってね。
理事長に住所を聞いたんだ。」

『そっ...か...』

嬉しいけど、少し戸惑ってしまった。

「改めておかえり。
お疲れ様。さ、ご飯にしよう?」

『うん、ただいま。
ありがとう。浅野が作ったの?』

サラダ、味噌汁、生姜焼き、白米。

浅野のことだから、料理も豪華なのかと思っていたけど、案外普通だった。

「ああ、変か?」

『ううん、びっくりしただけ。
食べよ!もうお腹ぺこぺこ。』

カバンとダウンをソファーに投げ捨て、席に座る。

今は少し機嫌がいいな。

『ん...美味しい、』

「そう?良かった。」

それから浅野と他愛のない会話をして、浅野は帰ることになった。

『ありがとう。
いつも一人だから、嬉しかった。』

「どういたしまして。
また来てもいいかな?」

『うん、待ってるね。』

手を振って、ドアを閉めた。
一人になったけど、もう寂しくはない。
また浅野が来てくれるから。

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