刀剣乱舞
□蛍丸、参上。
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『はじめまして。阿蘇神社にあった蛍丸でーす。よろしくね。』
そういって笑顔でみんなを見るけど、目が合うとすぐにそらされて。
それに、部屋の中には短刀と脇差しかいなくて。
みんななんだか苦しそうで。
「仲良くしてあげてねー。今日は私は政府に呼ばれてるから内番も出陣もなし!それじゃあいいこにしてるんだよ。」
そう言って去っていった主の後ろ姿が見えなくなると、空気が少し柔らかくなったように思う。
「…はじめまして、蛍丸君。僕は堀川国広。よろしくね。」
国広、と名乗る少年は、広間の中にいるどの刀よりもひどい表情だった。
それなのに、俺に対して笑顔を作る。
『よろしく、国広。』
「さあ、せっかくお休みだし、みんな、部屋に戻ろうか。蛍丸君は、愛染国俊くんと一緒でいいかな?」
「…おう。」
『いいよ。』
みんな静かになにも言わずに部屋へと戻っていく。
「蛍丸、行くぞ。」
『あ、待ってよ、国俊!』
少し歩いたところにある部屋へ、国俊は入っていった。
国俊について部屋に入れば、思いのほかその部屋は広かった。
「蛍、改めて、よろしくな。」
『うん、よろしく、国俊。…ねえ、きいてもいい?』
「なんだ?」
『…ここの本丸のみんなは、何をそんなにおびえてるの?』
そう口にした途端、国俊の肩がびくり、と震えた。
「…ここの、主はな……幼子にしか、興味がないんだ…」
『…は?』
突然突拍子もないことを聞かされて、思わず漏れた声。
幼子にしか、興味がない?
「…主は、俺ら短刀か、脇差にしか興味がないんだ。打刀や太刀が来ても、みんな、『折らせる』か、出陣させて、破壊するんだ。」
「大体は、俺らに、折らせるんだ。俺も…国之を、折った…」
そういった国俊の目から、涙がこぼれ落ちた。
『…そっか…』
いつも明るい国俊が、こんなにも苦しんでいる。
そう思うと、先程までいい人だと思っていた主が、恐ろしい人に見えてきた。
「蛍…嫌いになるか…?国之を折った俺のこと、嫌いになるか…?」
『なるわけないでしょ、何言ってるの…ごめんね、国俊、来るのが遅くなって…これからは、俺が国俊を、みんなを守るよ。だから、そんな顔、しないで…』
そう言って国俊を抱きしめれば、何かが切れたかのように、国俊は泣き出した。
きっと、国俊だけじゃない。
みんな、同じくらい苦しんでる。
俺が、助けてあげなくちゃ。
待っててね、みんな。