BIGBANG(ユメ)

□目覚め、そして過去
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リンsaid


リン「そんな、たいした話でもねぇ…ですよ?」

よしみ「いいの。教えて?」

俺が目覚めたのは三日前くらい。
その時は、とりあえず驚いた。てっきり死んだと思ってたから。
でも、生きてた。俺の命を、この人が救ってくれたんだ。もう一生かかっても恩を返せないくらい感謝してる。と同時に、自分が生きているという状況に不思議な感じがした。
あぁ、また生き延びてしまった、と。
つくづく悪運強いのかもしれない。

そして今、なぜか成り行きで俺の過去を話すことになってしまった。
恩人は、俺の目をじっと見る。
この人の目は、好きだ。
母さんを思い出す目。母さんと同じ目。…この人になら話してもいいかな、と思った。
俺は続ける。

リン「橘財閥ってしってますか?」

よしみ「知ってるわ。数年前に潰れちゃったけど、日本一ぐらいすごい財閥よね。」

リン「うん、そう。…俺、そこの次男だったんだ。」

あ、よしみさんの顔がすごいことに。
そら驚くわなぁ。

リン「でさ、俺の髪って赤いじゃん。これ、染めたんじゃないんだ。地毛なんだ。」

あ、またすごい顔。
…ちょっとおもしろい(笑)

リン「だからさぁ、いろんな人にきもちわらがれたりしたんだよね。悪魔の生まれ変わり、とかさ。
それでも、母さんたちは、そんなん気にしなかった。『どんな髪色でだって、私達の子供には変わりない』ってさ。大切にしてくれた。
まぁ、友達はできなかったけどね。幸せだったよ。」

よしみ「…いいお母さんお父さんね。」

もううるうるしてら。(笑)

リン「でも、5年生くらいのときかな。
俺、学校のやつに悪魔って言われて、キレてそいつ殴ちゃったんだ。
でもそいつさ、政敵の息子だったんだよ。かなり質の悪い政敵のやつでさ、いろんなヤクザとか、そーゆーやつらと繋がってるような。」

あーやばい。いろいろおもいだしてきちゃったなぁ。

ちょっと泣きそうになってだまってると、よしみさんは心配そうにのぞき込んできた。

よしみ「辛かったらいいのよ?」

リン「いえ、大丈夫です。」

俺は続けた。
あの日の悪夢を。

リン「その日はなんか家に帰るのが後ろめたくて、いつもより遅めに帰ったんだ。
…そしたらさ、家の方で人だかりが出来てて。なにかなって見たら…見たら。

…うちが、うちが、俺の髪と同じ色に燃え上がってて。
一瞬でさとったよ。俺が殴ったせいだって。下手に政敵のやつに手だしたせいだって。俺はほんとに悪魔だったんだ。不幸しか呼ばない。ほんとにほんとに絶望した。
もちろん母さんたちは即死でさ。
俺ひとりが生き残っちゃって。
凄腕の父さんでもなく、
優しい母さんでもなく、
頼りになる兄さんでもなく。
悪魔の俺が。」

よしみ「リンくん、おちついて!」

はっ、と気がついた。
はぁ、はぁ、はぁ。
どうやら俺は、無意識にノンストップで話してたっぽい。
無意識って…はは。やべぇかも。

リン「すみません、取り乱しました」

よしみ「…ほんとに、だい「じょうぶです」……無理だけはしないでね?」

ふぅーーと深呼吸をする。
よし、落ち着いた。
そして俺は、過去を思い出すようにできるだけゆっくり言葉を紡いでいく。
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