BIGBANG(ユメ)

□西武ドームへ
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2013年11月上旬のある日。

saidリン


俺がよしみさんに拾われて、ちょうど3年目くらい。もうそんなにたったんだ、とカレンダー見ながら思った。
そーだよ、俺もう21じゃん。
あんときはまだ18だったのに…。時たつのって、早いんだなぁ。
でも、そんなに年とったかんはないと思う。
特に顔。だって童顔だし。

いろいろ余計なこと考えてたら、ずいっとよしみさんが顔をよせてきた。

よしみ「で、どうする?」

…もっかいカレンダーを見てみた。
11月15日。
…明日じゃねぇか。ええええまじか。



ことの発端は、ほんのついさっき。
特にやることがなくて、休憩室で休んでたらよしみさんに呼び出された。
行ってみたら、こんなことを言われた。

よしみ「16日から、BIGBANGのツアーが始まるわけ。」

リン「あぁ、知ってる。確か、最初は西武ドームだっけ?」

よしみ「そう。でね、あなたにそこのスタッフとして向かってほしいの。」

リン「え、まじで?俺が?
うぉお、初めてだ、スタッフで行くなんて」

今までずっと雑用だったからなー。
しかも、BIGBANGとか。なんか光栄。

よしみ「で、それはいいんだけど。」

リン「…ん?」

なんだろ、ちょっと胸騒ぎ。
だってなんか。
よしみさんの顔が少し険しい(気がする)

よしみ「しばらくBIGBANGのスタッフとしてついて、その…韓国に留学とかしてみない?」

リン「…は?」

よしみ「だからね、韓国に家を借りて、BIGBANGが日本で活動してるか時はスタッフとして、韓国に帰るときは一緒に帰って韓国で生活!ってことよ。」


ということで冒頭にもどる。

急な提案に俺は戸惑うしかない。
一ヶ月後からだけど、どう?って言われたら考えてみるけど、俺の場合 明日だろ?
明日からスタッフとして向かって、そのまま留学スタート?

よしみ「ちなみに、もう家借りといてあげたけど…どう?」

…まじかよ。行動力すげぇよ。
でも、せめて俺の返事聞いてからにして欲しかったぜ。
なんか…提案というより、命令みたいだ。

よしみ「ほらほら、出発の準備!」

え、まだ俺OKてゆってないんだけど。
え、もうこれ決定なの?

でもだからって、命の恩人であるよしみさんに逆らえない俺は流されて。
一旦家に帰らされて俺の私物とか全部荷物まとめられて。
結局、身支度ができてしまった。
身支度をしてる間、悪い考えがずっと頭を横切っていた。
"俺は邪魔になったのか?"

リン「…ねぇ、よしみさん。」

よしみ「ん?なに?」

リン「そんなに、俺に留学行かせたいの?」

よしみ「…?どういうこと?」

リン「だって、今日のよしみさん変だぜ。俺の返事聞かずにこんなに強引に物事決めてさ。…正直に言っていいんだよ。俺が邪魔になったから家から追い出したいって。そしたらそんな口実つくんなくても、俺出てくか「バカ!!!」…え?」

若干やけくそになった俺の言葉は、よしみさんの叫び声で遮られた。

よしみ「あんた、バカなの⁈そんなわけないじゃない!邪魔になるくらいならあなたを引き取ってないわ!」

リン「よ、よしみさん…」

よしみ「私があなたを幸せにしてあげたい、居場所になってあげたい。そういう思いで引き取ったのに!俺は邪魔だ、とかいらない、とか、そういう考えに持ってっちゃダメ!わかった⁈」

よしみさんの勢いはすごかった。圧倒された。
けど、その言葉ひとつひとつはちゃんと俺の胸に届いた。…俺、失言だったな。

リン「…ごめん、よしみさん。俺、思い込みはげしかった。…けどさ、留学させる理由だけ、教えてくんない?」

よしみ「それは、世界を広げるため。」

リン「世界を…?」

よしみ「YGは韓国の会社だから、たとえ日本支部だとしても韓国語は必須なの。でね、私はあなたの居場所は、おそらく…ココになると思うの。だから、韓国語を少しでも知って欲しくて。それに、近所の国だからといって、外国の文化とか、人とか。そういうものに触れると、きっとあなたの世界は広がる。今まで自分だけでいっぱいいっぱいだったあなたの世界が広がるの。どう?素敵でしょ?」

リン「…俺の世界が…ひろがる。
……うん、悪くねぇ」

生きるのに必死で、俺の世界はちっぽけだった。
そんな世界が広がるというのは、俺にとっちゃあすげぇ価値のあるものだ。

よしみ「ふふ、よかった。…でも、ちょっとさみしくなるわねぇ。しばらくリンの寝顔が見れなくなる」

リン「…なにそれ。」

いっつも見てたのかよ。恥ずかしい。

よしみ「とりあえず、明日の早朝、家でたらいいとおもうわ。」

リン「あぁ…わかった。」

よしみ「リンはもうこのまま今日の仕事終わりでいいわよ。私はまだちょっと残ってるから、事務所いくわね。」

そういって、よしみさんは事務所にむかっていった。

俺はよしみさんが家をでると同時に自分の部屋にダッシュしてベッドにとびこんだ。

…どうしよう。
行くことになってしまった。ほんとに。
いやまじか。まじか。まじかぁ。
ああああ、もっとこころの準備の時間がほしい!
いろいろ急すぎて頭がまだいまいち追いついてない。

けど、少し楽しみでもある。
留学をして、どんな風に自分は変われるのか。
まぁ留学だけじゃなく、スタッフとしても頑張らなきゃだけどね。

不安半分、楽しみ半分。
おれはそのまま寝てしまった。
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