短編

□夏輝BD2018
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もうすぐ夏輝さんの誕生日。
思い切ってストレートに、欲しいものが無いか聞いてみたけど
敢え無く玉砕。
社交辞令と思われたのか、
それとも、私が入る隙間なんてないのか
面と向かって断られちゃった。
夏輝さんは優しいから、
気持ちだけで嬉しいって言っていたけれど。

──オトコが誕生日に欲しいものなんて、
そんなの好きな子からの
チューしかないよな?──

冬馬さんのからかい口調の言葉が
やけに胸に刺さる。

そっか。夏輝さん、きっと彼女がいるんだ。
だから、やんわりと私を断ったんだ。
強引にプレゼントを渡しても
彼ならきっと困った顔をしながらでも
受け取ってしまうだろう。
そんな事にも気づかずに
私ったら自分勝手に……

ズキズキと痛む胸。
大丈夫。今ならまだ、傷は浅いはず。
そう思い目を瞑り、深く深呼吸する。
それでも、じわじわと浮かんでくる涙。

どれくらい、そうしていただろう。
不意にドアをノックする音が聞こえる。
そして──

『夏輝です、まだいる?』

会いたいけど、今は会いたくない人。
でもやっぱり、自分の気持ちが抑えられなくて
私はドアを開けてしまった。

『あの……さ。
さっきの事だけど。
やっぱりリクエストしてもいい?
誕生日プレゼント』

私が断られて、申し訳なく思っているのかもしれない。
そんな不安があったけれど
夏輝さんの次の一言で
全てが吹き飛んでしまった。

『やっぱさ、好きな女の子には
一番に祝ってもらいたくて……』


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