ダー芸ワンライ6

□19.記憶
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『あの、伝えて貰えますか?』
今思い出しても、最低最悪のタイミングだと記憶している。

『ご、ごめんなさい!……って』
なにもそんなに大声で

『そ、それじゃあ、本当にもうこれで!
ほんっとうにごめんなさいっ!』
ダメ押しの一発にそんなセリフを吐いて
あの子は俺の前から逃げて行った。

冗談じゃない。
こんな大勢の前で誤解されるようなセリフを。
しかも、よりにもよって俺が好意を寄せてた女子の耳にも入ってしまった。
『折原くん…元気だして』
そんな励ましの言葉を貰ってしまった。
『いや、あれはその、違うんだ』
ここは勢いに任せて俺の気持ちを彼女に…!

『お、俺が本当に好きなのは……
その……君なんだ』
『……』

卒業までには伝えようと思ってた。
それが少し早くなっただけ。
俺はピンチをチャンスに変え……

『折原くん……そういう人なんだ……』
『……え?』
『あの子がダメならこの子、みたいに
簡単に気持ちを切り替えられる人だなんて思わなかった』
『は……?え、あの?』
『サイテー……』

まさか一日に二回(そのうち一回は周りの勘違いだけど)も女子から振られた、と
周りに噂されるハメになるとは。
それもこれも……


『おい、春!
思いっきりとばっちりを食らったんだけど!』
『どうした。そんなに声を荒げて』
『どうしたじゃねーよ、
お前のせいだろ』

そもそもあの一年の子が、春に謝りに来なければ、こんな誤解は生まれなかった。
俺だって好きな子への告白は、もっと下準備とかして……

『……休み時間に公開処刑されたと噂されていたのはお前だったのか』
『だから、違うんだって!』
涼しい顔して、他人事のように言いやがって!
春はあんまり感情の起伏がないから
こんな誤解を受けてもサラリとかわしそうだけど。

『夏輝はいつの間に、
彼女に告白していたんだ?』
『だから、違うんだっつーの!』
あーーー!腹立つ!
ぜってーお前のせいだ!
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