短編

□熱帯夜
1ページ/1ページ

サラサラのシーツに手を泳がせる。
誰も触れていないそれは、
こんな夜には気持ちがよくて。


(なんでこんなにヒンヤリしてるんだ?)

あるはずの温もりがなくて
でもおそらく、水でも取りに行ったのだろうと予想する。
だから俺は、たいして気にも留めずに
再び微睡む。



(……いや、遅ぇし)

待てど暮らせど
戻ってこない甘い温もり。
不安になって探してみても
部屋のどこにも見つけられなくて。
仄かに聞こえるシャワーの音に
そろりと足を忍ばせると
扉の向こうに見える姿に
胸をなでおろす。


やっと扉が開いたかと思えば
小さな悲鳴をあげられて
事情を話せばクスッと笑われ
出てきた言葉は
『冬馬さん、可愛いです』って。


蒸し暑い浴室に二人で閉じこもるか
冷えたベットに二人で閉じこもるか

お前が決めていいぜ。


次の章へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ