ダー芸ワンライ6
□25.5キロ先を左折
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3日後にはツアーが始まる。
正直もうここに通っていられる余裕はない。
ツアーの準備、セットリストの最終確認、体調管理。
その他細かいことが諸々。
春も少し悩んでいたけれど、今はツアーのことで頭がいっぱいなはずだ。
にぶちんには、しぱらくここに来れないことを伝え、ツアーが終わったら、春と一緒に記憶探しの旅にでも出てもらおう。
いつものカフェの、いつもの席。
相変わらずそこにはいつもの……
(って、冬馬?)
さっきまで一緒に練習していた冬馬が
なぜか彼女の向かいの席に腰を下ろしていた。
嫌な予感しかしない……。
『まぁ、ツアーから帰ってきたら、少しは休み貰えるから
そしたら春と旅行にでも行ってこいよ』
『今の状態で、一緒に旅行とかするんでしょうか?』
『大丈夫、きっとどうにかなるって』
冬馬の気休めとも言える無責任な言葉が、いつか彼女を傷つけるのではとヒヤヒヤした。
そして案の定、それは的中した。
冬馬『でさ、ぶっちゃけた提案なんだけど……体に触れたらほんの少し思い出すみたいなんだよ。だから──』
俺が先に到着していれば、そんな言葉を聞かせずに済んだのに、クソッ!
『一回、ヤってみたらどうかな?』