ダー芸ワンライ6

□23.拭えない違和感
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『珍しいな、春が人前で居眠りなんて』
『眠れねーんだとさ、自宅では』

秋羅と冬馬の声が聞こえる。

『やっぱ、まだ戻らないのか?』
『すっぽりと抜け落ちてるっぽい』

ゆらゆらと船を漕ぎながらも
二人の会話が耳に入ってくる。

落ち着かない自宅よりも
移動中や休憩中に
小刻みに眠った方が楽だった。

『連絡取り合ってんのか?』
『さあな、そこまでは……』

退院のメールを送った後、
彼女からは『ゆっくり休んでください』とだけ返信がきたきり。
もう二週間も前のことだ。
それ以降はお互いに、何もコンタクトは取っていない。
彼女のことを思い出そうと考えはするが
その度にズキズキと頭が痛み、
すぐに考えることを放棄する。
仕事に没頭していた方が何倍も楽だった。

『悪い、遅くなった』
遅れてきた夏輝が来たことで
俺はようやく、目を開けた。
覚醒しきっていない視界が、まだぼんやりとする。

頭の中の霧は、まだ晴れそうにない。
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