赤鬼作 歌詞

□東京サマーセッション
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遥香side

駅を降りた頃配られたチラシに今日何度目かの目を通す仕草を繰り返す。

何度もなんども同じ文章を行ったり来たり。

紙を折りしまいこんだと思えば、また数秒後には無意識に取り出し同じ文章を眺める始末。

そのチラシにはでかでかと「花火大会」の文字が踊っていた

そして・・・

私が何をここまで迷っているかというと・・・

チラシの真ん中あたりに皮肉にも赤い色で記されてある「恋人」という文字

きっと、作った人はそんなつもりなんて一切無いんだろうけど、私としては

友達のままでいいの??恋人ととして行かなくていいの?祭りに誘わなくていいの??

なんてうるさい願望がメガホンで叫ぶぞとばかりに伝えてくる

分かってるよ。そんな事くらい。

あの子の事だから、きっと「祭り」は好きじゃない

人が多いところは苦手なんよなーなんて言うに決まってる

だから誘うのは難しくて、でもふたりで行きたくて・・・

ああもうだから

知ってるよ・・・分かってるよ。

私が知りたいのは、あの子が、その・・・由依が

私をどう思ってるのか

「遥香?」

ビクッと大袈裟なほど肩が飛び上がった

どうしてこんなにもタイミングが悪いの?!?!

心臓がバクバクとうるさくて、足のつま先から頭のてっぺんまで真っ赤に染まっていくのが体温の熱さから感じ取れた

「お、おはよ」

「どうしたん?めっちゃぼーっとしてるやん」

この特徴的な関西なまりと、関西弁特有の方言のキツさをかき消すようなクシャッとした笑顔

私らしくない。たったこんな表情にもすぐドキッとしちゃって

「ん?なにそれ」

何度も折っては拡げてを繰り返し、すっかりくしゃくしゃになった祭りのチラシ

それをサラッと奪われて目を通される

もうなんで?!私はまだ焦ってるのに!!

いきなりすぎるよ!!由依はいっつも!

チラシに目を通したまま固まってる由依を見たらなんだかヤケクソになってきて流れのまま由依にぶつけた

「そ、その。花火大会来週あるんだって」

顔色をちらっと伺ったらいかにも嫌そうな顔をした由依と目があった

「ああいう人が多いのあたし苦手やねんなぁ」

知ってるよ!!もう!!!

「あーあそれじゃ誰か他をあたろっかなぁ」

わざとらしく由依に聞こえるように言ってみる

由依が私の駄々に弱いのは昔っから認証済みだから

「や、やっぱ楽しそうやな、結構行きたかったり・・・するかな!」

なんて見え見えの嘘。

それでもいいの。

由依とお祭りデート
その一言が私の心を踊らせ、明るい花火を打ち上げ浴衣の帯を揺らすのだから。
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