赤鬼作 短編集

□猫
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ソルトside

「なぁ・・・おたべ・・・?」

気持ちのいいそよ風が肌をかすめていく

「なんや?」

おたべはお手玉ばっかり見ていてこっちを見てくれない

「おたべ」

二つあるお手玉のうちひとつだけをぎゅっと握った

「はいはい・・・んでなんや?」

今度はちゃんと目が合った

「フッ・・・なんでもない・・・ただ呼んだだけ・・・」

私のことを見てくれないのは寂しいから・・・

「なんやねん」

おたべは苦笑いで片手を突き出してきた

お手玉を返してやろうかと思ったけど・・・まだ・・・

「ダメ」

私が横になっている赤いソファーのふちにすわったおたべ

「ソルトどないしたん?悩んでんの?」

なんだよ・・・悩みの種はおたべだ・・・

「お、おたべのことで・・・悩んでんだよ・・・」

ぶっきらぼうに言いのけおたべから視線を外した

「そっか・・・力になれることあんのやったらいつでも手伝うで?」

誰にでも優しくて気配りをする

そんな優しいおたべに惹かれている自分がいた

「手伝いになってくれるのか・・・?」

「ええよ・・・あたしが出来ることなんやったらやけど・・・ソルトのためやもん」

ニッコリ微笑んだおたべ

寝転がっていたけど即座に立ち上がった

「ソルト?」

無言でおたべをソファに押し倒した

優しく・・・

ゆっくりと・・・

「どうしたん?」

「全部全部・・・おたべが悪いんだ・・・」

自分でもわかってる意味分からないことばっかり口走ってて・・・

「その気にさせたおたべが悪い・・・私を惚れされたおたべが悪い・・・」

有無言わさずぐっと顔を近づけた

最後に見えたおたべの顔すべてを受け入れるかのように優しく目を閉じていた

私の唇がおたべの唇と重なった

軽く触れたあとすぐ離そうとしてたのにおたべに私の後頭部を掴まれてぐっと押し付けられた

「ん?!?」

びっくりして手足をバタバタさせる、そんな小さな抵抗はなんの害にもなっていないみたい

息が苦しくなっておたべの胸もとをトントンと叩いた

「っ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

息ひとつ荒れていないおたべ

「なんやソルト、襲っといて襲われてもたやん」

クスクス笑ってる・・・

「年上なめんなや?ソルト。こんな頑張って無理矢理せんでもいつでもあたしがやっちゃる」

主導権は・・・やっぱりおたべが握っちゃうんじゃん・・・

「バカ・・・」

「ははっ・・・あんたに言われたないわぁ」

頭ポンポン撫でられて安心とも言える心地よさ

すぐに眠りについた

寝てる間にキスされてたことは知らないのだろう

おたべが口を開くまで・・・ずっと。

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