赤鬼作 短編集
□心からの愛
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おたべside
「おたべ・・・?」
本日何度目かのあたしを呼ぶソルトの声
まだ昨日の光景がついさっきの事のように思い出されて、苛立ちは消えへん
「おたべ・・・」
ついには鼻声になってきて、うつ向いた
「いつまでシカトしてんだよ」
マジックのちょっと笑った一言に睨みを入れれば、真剣って事に気付いたんかそれ以上なんも言ってこやんかった
「おた」
「ええ加減うるさいんやけど、黙れやほんまに」
こんな事言ったらあかんって悲しむって分かってるけど・・・
ソルトか悪いんや
「っ」
あたしの前に立ってたソルトは足早に部長室に入っていった
ソルトが流した一滴の涙が、足元に光輝いてた
たまにはお灸も添えやな、いつまでもへらへらしてると思ったら大間違いや
「おたべ言い過ぎじゃないのか」
「そうですよ、ソルトさん泣いちゃったじゃないですか」
困ったような怒ったような不思議な顔をしたバカモノ
「バカモノは気にせんでええねん、ちょっと色々あってな?」
ヨガの一言にはあえて触れやんとバカモノの頭をクシャクシャ、撫でる
「すぐ仲直りしてくれます?」
「うーん、どうやろな?ソルトとヨガ次第とちゃうか?」
ヨガの部分を強調して、ヨガとも目を合わせん
おとなげないなーあたしって
────
いつもは6時頃まで皆残ってるくせに・・・
今日は皆帰ってもて早くもあたしとソルトふたりっきりになった
いや、ソルト部長室やしひとりっきり?
がちゃって扉が開いてうつ向いたソルトが出てきた
「ごめん・・・おたべ・・・」
この言葉にもまだなんも返答しちゃらん
「ごめん・・・」
「なんで謝ってんの?」
びくって震えたかと思えば、それ以上なんも言わんくなった
「なんでか分からんと薄っぺらく謝ってんの?」
最初は、アリの声みたいにちっさい声やったけど徐々に声を出して泣き始めた
泣きたいんこっちやってば・・・
「分からないけど・・・おたべに悪い事しちゃった・・・」
無言の状態が続いて更にソルトの肩身が縮こまっていく
「本当に・・・ごめん・・・。おたべ・・・怒らないで・・・」
ところどころ切羽詰って、涙がぽろぽろ頬を伝っていって床に情けなく落ちていく
いじわるしすぎたかな・・・
「もう次はないで・・・」
泣いてるソルトをぎゅっーって抱き締めて胸に押し付けたら更に大声で泣き始めた
「こっちこそごめん、泣かせるつもりはなかったんよ」
「っっいけず」
そっからは泣き止むまで抱き締めて、帰りは家まで送っていった
どう努力しようとソルトのことは嫌いになれやんねん心から愛してるから。