Splatoon

□もうひとつ
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ホタルside

蝉時雨があちらこちらで鳴り響いている

カンカンに照りつけた太陽が、少し外に出ただけで暑さを主張し始めた

ただでさえ着物に身を通し、風通しの悪い事この上ない暑さなのに・・・

沓脱石に揃えていた黄緑の下駄を手に取る

素足のまま下駄を突っかけ、縁側により掛けていた番傘を足元で開いた

「暑いなぁ」

返事は返ってこないけれど、いつもの癖で語りかけてしまう

いつも右に居たあの子のことを思い浮かべうっすら微笑んだ

いつになったら帰ってくるんやろか?

何度も探しに行った
何度もオクタリアンを撃ち抜いた

声が枯れても、喉が腫れても

構わず名前を呼び続けた。

けれど

返事が返ってくることは一度もなかった


一度ゆっくりまばたきをし、木影に置いてある、少し埃を被ったソファを置いた日を思い出した

アタシ達が家中駆け回って汚しに汚しまくり、親にゲンコツを食らわされた日

あの子と半べそをかき、公園のベンチに座っていたらおじいちゃんが来てくれた

何があったのか聞かれ、二人して泣きながら話したらおじいちゃんがこの場所を教えてくれたのだ

雨の日でも来られるようにと、小さな小屋を作り、物置にしまっていたソファを運び、お菓子やジュースを持ち込んだ

ここがアオリちゃんとアタシの秘密基地だった。

何をするにもここだった

ここだけがアオリちゃんの唯一になれる場所だった・・・

だから、アオリちゃんはここに居る。来て欲しい、来てくれる。

そう信じ、アタシは今日も待ち続ける



ねえアオリちゃん

おるんやろ?ここにアオリちゃんはおるんよね?

いつになったら戻ってきてくれるん?

今日もおじいちゃんのおはぎ置いて待ってるからさ

アオリちゃんが脱ぎ捨てて行ったピンクの下駄、ちゃんと沓脱石に揃えてあるからさ

だからさ、アオリちゃん

お願いやから

アタシの元に帰ってきてくれやん?


足元の乾いた地面に、ポツポツと小さな水玉模様が浮かび上がった。

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