Splatoon

□アタシだけのアイドル
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ホタルside

夏休みも明けアタシらも学校に通う日になった

ハイカラシティのアイドル、シオカラーズ

その正体はごく普通のハイカラ高等学校に通う17歳の女子高生

皆と少し違うんは、アタシとアオリちゃんが2人暮らしをしながら高校に通ってること

「アオリちゃん、そろそろ出るけんね、ご飯飲み込んだ?」

「おんおんあ!!」(飲み込んだ!

口の中パンパンに朝ごはんを詰め込んだハムスターみたいな姿で言う

「待ったるからはよ飲み込みんしゃい」

そう言うと一気に詰め込んでいたもの全てをゴックンした

ようそれで喉詰まらんなぁ・・・

「はよ行こ、遅刻すんで」

パタパタと忙しげな足音で後ろから付いてくる

へへへー!なんて何か企んでるのか、無意識なのか・・・

暑苦しいのに手をぎゅっと。

「アオリちゃん暑いねんけど?」

「いいじゃん!久しぶりの登校なんだし!」

登校、言葉を変えれば確かに久しぶりだけど、事務所やテレビ局に向かうのはいつも二人でだったから対して久しぶりでもない

てか毎日一緒だったし

手を繋いだまま校内に入り、廊下を歩き、教室に入る

未だにあたしはこの好奇の目が苦手だ

シオカラーズをひとめ見ようと校門で待ち伏せされたり、携帯で隠し撮りをされたり。

アオリちゃんは、そういうのが得意で逆に手の中に納めちゃうんだから

運が良いのかアオリちゃんのわがままにマネージャーさんが参ったのか

アタシ達は一年二年と同じクラス

席こそは離れてるものの、毎朝手を繋いで教室に入り、アタシが席に座るまでアオリちゃんは手を離そうとしやんからそれまでアオリ勢に取り巻かれることになる

実際めんどくさいんよね、ああいうの

「アオリ!おはよ!」

このクラスにはアオリちゃん派が多い

それはきっとアオリちゃんが誰とでも仲良くなれるから

好きなコスメは、好きな俳優は、最近のドラマは。

天然なくせにこういう所は抜けみなくしっかりしてて、素っ気ないアタシとは反対にすぐにクラスの中心人物になってしまった

「あ、あのホタルさん。これ、貴方達が休んでた時学活でアンケートとったの」

珍しくアタシの席の前にお客が現れる

手渡された数枚の薄っぺらいアンケート用紙

席に座った状態で見上げるとその子は俯いてアタシと目を合わせようとしない

それはアイドルのアタシと目を合わせるのが恥ずかしいから、とかそんなんじゃないってすぐに分かる

握手会やサイン会でファンの人達が見せる、顔を真っ赤にしながらもじもじ俯く。とはまた違う俯きだからだ

まあ分かってんよ

アタシが怖い、そういう事でしょ?

「ああ、あんがと」

受け取るとすぐにどこか違うグループに行ってしまう

別に寂しいわけじゃない、誰かと一緒に居たいとか、喋ってたいとか、そんなんじゃない

ただ正反対の相方を見てほんの少し心がチクリとする

アタシだって別に冷たくしたくてしてるわけじゃない

最近はクールビューティだとか言った言葉が流行ってるけど目指してるわけでもない

昔から内気なだけなのだ

恥ずかしがりで、あがり症で、人見知りで、内気。

それが本来のホタルの姿なだけ

それがどうも不機嫌に見られちゃうんだよなぁ

今となっては別に気にするようなことではないけれど。

「アオリちゃん・・・」

「ホータールちゃん!」

また来た、いつもそう

アタシが1人なのを気遣ってか楽しそうな輪から外れてアタシの方に来る

「戻んなくていいの?あの子らこっち見てんよ?」

机の中から読書用の本を取り出しながら訪ねた

「いいでしょ、いつでも喋れるし」

「アタシの方がいつでも喋れるでしょうが、家帰ったら二人っきりなんだし」

何気ない「二人っきり」という言葉

アオリちゃんの耳にはこの短い単語がどう響いたのか

「アタシはホタルちゃんとしゃべ「アオリー!」

アオリちゃんを呼ぶ声

どうしてこんなにも相方との出来の差が激しいんだろう

従姉妹同士、別段すっごく離れてるってわけでもない血縁

なのにこんなにも違う。

「呼ばれてるよ、行ってきんしゃい」

アタシを呼ぶ声はない

誰もアタシを呼ばない

別にいいよ、アオリちゃんだけでアタシは充分だから。

ああ、学校なんて始まらなければよかった

アタシを必要とするアオリちゃんの存在

アオリちゃんの存在だけで良いのに。
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