赤鬼作 短編集2

□最期
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おたべside

目の前にぐったりとして横たわってるソルト

なんでかはわからん。

けど直感でか「死んでしまう」という事だけは分かった

いやだ・・・怖い・・・

目の前から・・・また愛しい人が消えるのが・・・

手をぎゅって握り締めたらあたしの方を見てふんわりと微笑んでくれる

その微笑みは、疲れ果てたような・・・げっそりとした笑み。

「ソル・・・ト・・・」

「出会えた事・・・愛せた事・・・愛してくれた事・・・。たくさんの幸せをくれてありがとう・・・。
それなのに何も返せなかった・・・。

本当にごめんなさい・・・」

そう言って目をスッと閉じた

涙があとを追うように流れてきて・・・、ソルトの死が非現実的すぎて。

なにもかも信じられやんかった

「まだ話そう?・・・まだ眠ったあかん・・・まだまだ・・・話したりてへん・・・。
もっと話したい事が・・・伝えたい事があるんや・・・

だから・・・目を覚まして?」

ポツッとあたしの涙がソルトの頬に落ちた

「いややソルト・・・そんな・・・
うあぁあぁ!!」

────
ガバッと跳ね起きたら髪にクシを通してたソルトに不思議な目で見られる

ここは・・・

ソルトんちの寝室・・・??

「どうした・・・泣いてんぞ・・・」

四つん這いのまま近付いてきて、涙を拭ってくれる

「ソルト・・・あたしのことひとりにしやんといて・・・。ずっと側に居て・・・」

さっきの夢がイヤに清明で。

声も顔も言葉もはっきり覚えてる

だから、正夢にならんか心配やった

「なんだ・・・嫌な夢でも見たのか・・・?」

ベッドに座って引き寄せられるまま、ソルトの胸に倒れ込んだ

「ソルトがあたしの前から消える夢・・・。
イヤやった・・・ほんまに怖かった」

そんなことを言ったらいつもは困った顔をするくせに・・・

今日だけはクスクスわらって、痛いぐらい胸に押し付けられた

「馬鹿か・・・私があんたの前から消えるわけねえだろ・・・」

その言葉に何度も何度も頷いて、強く背中に手を回した

「もうそろそろ眠いんだ・・・、寝ていいか?」

「あかん・・・」

なんて自分でもめちゃくちゃやなって思うぐらいのわがまま

でもまたあの夢を見るのか

起きた後ソルトが居なくなるのか

そう考えたら余計に怖くなった

「じゃあ隣来いよ・・・」

はい、って言いながら
右手をぽんぽんと差し出してくる

やっぱり普段とは違うソルトの態度

「なん・・・」

「泣いてる姫はほっとけねえだろ・・・?」

にこって優しく笑うソルト。

今日ぐらい・・・甘えてもええかな?

唇をそっと寄せたらフフって笑いながらソルトも答えてくれる

失いたくない、離したくない・・・

こんなにも愛しい人やから。

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