赤鬼作 短編集

□そばがいい。
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おたべside

ソルトの姿を見やんまま卒業するんやと思ってた。

でも卒業式二日前の夜。

不意にソルトの姿を見る事になった。

廃棄された工事の影側で怒声と肉を打つ音が木霊していたから。

チラッと見てみたら鉄パイプやら木材やらを片手に女子高生に向かってるおやっさんがたと、長い髪をなびかせ美しく舞っている少女。

その姿には見覚えがあって自然と口角が上がってた。

バシッと最後の1人のみぞおちを射抜いたあとその子は垂れ下がった前髪をかきあげた

「弱い者いじめは・・・いけないよ・・・」


傷のひとつもついてへん体は返り血だけが鮮やかに彩ってる。


「ソールトっ」


そう言って軽やかに近付いていけば驚いたように目を見開いた


「なんで・・・」


「なんではこっちが言いたいわ」


さっき買ってきてた缶ジュースをほって寄こしたらちょっぴり目を細めた


「学校なんで来やんかったん?」


近くにあったベンチに腰掛けたらソルトもゆっくり隣に座った


「会わす顔が・・・無かったんだ」


「え?」


聞き返したら苦しそうな顔して、ぽつりぽつりと口を開き出した


「私は・・・ゲキオコに負けた。部長なのに・・・。
ヨガたちの信頼が心地よかったんだ・・・あいつらの喜んだ顔が。
だから強くならなきゃ・・・もっともっと」


そう言ってうつむき固く目を閉じた。
「アホか」


ちょっと強めにソルトの頭をばしっと叩いた。


「あんたがおらんくなったらヨガらはもっと悲しむやろ。
ヨガらはな?ソルトの勇姿が見たいから付いてってるんちゃう。
ソルトのそばに居てたいからラッパッパにおんねん」


にかって笑ったらソルトの目が更に見開かれた


「私の・・・そば・・・?」


「そうや、少なくともあたしはそうやけどな?」


ソルトの顔がほくほく顔になってやっと少女らしさが見えてくる


そう。この顔が好き


幸せそうな楽しそうなこのむじゃきな表情が。

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