140ss


鳳仙花の種がぱんと弾けた。何度かチカチカしたかと思うとまた激しく浮かび上がった。シーツを掴んでいた手を包んで、もういっかいと後ろから囁く唇が女を探る。眠れない程掻き乱されるのも悪くないと思う自分が少し可笑しいのだと気づく頃には既に、幾つ目の種が白粉を散らしたのか分からなくなった。

title:成熟
貴方は夜トひよで『シーツをつかんで / 眠れない』をお題にして140文字SSを書いてください。
2016/2/23




「夜ト!提出物は期限までに出せと何度言ったら…、チッ。逃げ足の早い奴め」どこ行きくさった、とプラチナブロンドをなびかせる女教師の怒声が遠ざかる。静まり返った教室の掃除用具入れの中。いつまでこうしてるつもり?と訊ねてもただニヤニヤと笑うだけ。近すぎる体温に、ほんのちょっぴり罪の意識。

title:学パロ(ヴィーナ先生と夜トひよ)
貴方は夜トひよで『共犯者の笑み』をお題にして140文字SSを書いてください。
2016/2/23




午後の陽がリノリウムの廊下を照らす。あの日から数十年。自分にとってはあまりにも短い年月。唇が震えた。前に近づかなくともすぐ分かる。看護師がするよりずっといいと彼女は喜んだ。濡らした脱脂綿を唇に宛てれば、縮こまった舌がぴくりと動く。黄色い手を握ってやると、ひよりは嬉しそうに笑った。

title:「帰れ」と言ったあの日から
貴方は夜トひよで『幸せの終わり』をお題にして140文字SSを書いてください。
2016/2/23




確かもの凄い音をたてて肩の骨がひしゃげていた。雪音はふと夜トの肩に付いた歯形をみつけて夏の一騒動を思い出した。「どうしたソレ、またひよりに噛まれた?(笑)」冗談のつもりで言ったのに真っ赤な顔をされる。昨夜、彼女を送っていった主の帰りが遅かった理由に気づき赤面してしまうまであと数秒。

title:道標はみた。
2016/3/5

[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ