小説

□休眠打破
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 日曜日。いつもならこの時間も机に向かっているはずだったが、雪音くんは本屋に出掛けていったため私も少し休憩をとりに下へ降りた。

 降り注ぐ春の陽が、夜トの寝転がっている畳の上にひだまりをつくっていた。
 そこで埃がうろうろとし、息を吹き掛けるとその軽さゆえにこちらへ寄ってくる。つかまえようとするとふわりと逃げる。

 私のそのふわふわの意識は光のなかで泳いだ。
 また私の髪は風だった。
 手は木々の幹となり、目は蕾、息は枝になった。
 ぼんやりとしたまま、横たわる午後の香りを感じていた。

 夜トの前髪がなびいて、瞼の上にかかったそれをはらってたらおでこに指が触れてしまう。夜トは目を開き、一瞬合ったようなきがして、そうしたら今度はゆっくりと瞑って、最後は安心したように微睡んだ。



 長いまつげを追い越して、突然はらはら涙をこぼしたのは、彼が今もずっと闘っているからだ。

 でもどうか、忘れないでいてあげて。
 辛くて悲しい過去もぜんぶ、きっと夜トのなりたい自分に繋がっていますから。



 寒い冬があってこそ、桜は花を開く。
 出会って、別れて、また出会う。

 また、春がやってくる。




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